第3回 倉持裕さん(劇作家・脚本家・演出家 44才)

むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

不安になると心臓がバクバクしてしまう、いわゆる動悸というやつでしょうか。いままで数回経験しましたが、自分を自分でコントロールできないあの独特な恐怖感は、できればもう経験したくないものです。

その、最後の動悸から1年が経ちました。
奴が再びやってこないようにするためには、なんだかちょっとやそっとの工事では修正不可能な気がして、自分の土台から掘り起こすコツコツとした基礎工事を、地味に続けてきた1年間でありました。

まあ、動悸なんてのは、ただの動機で…言葉遊びは、ご自身のコンディションによってはイラっとしますでしょう? もしイラっとしたら、見ているこの画面を殴って気を紛らせてくださいね。

つづけます。
まあ、動悸なんてのは、ただの動機で…それまでの自分を続けていたら限界になってしまうという合図だったのだと、いまでは思います。もう、コップの水ギリギリの表面張力のような状態だったのでしょう。

自分のことをもっともっと、我慢したり、頑張ったりできる人間だと思っていましたが、そうでもなかった…のに我慢させたり、頑張らせていたのが、可哀想だったね自分…と、自分の出来なさ加減も愛おしく思えるようになった1年後の現在です。

我慢や頑張りといえば、お仕事に対してもそうした部分がたくさんあったのですが…まあ、お仕事というものは、ほぼほぼ我慢や頑張りで構成されているものでもありますが、その面でも約1年前にはコップの水が溢れてしまった感もありました。

ということで、全面的な自分リフォームに勤しんできた1年間。
以前に比べるとだいぶ楽な状態になってきましたが、やはりまだまだ翻弄されるのは、自己肯定感の低さです。

いろんな情報を紡ぎ合わせていくと、幼い頃からの愛情不足が一番の原因らしいですが、そんなこといわれたって、タイムマシンも魔法もないこの世では、いまさらどうにかできるものでもありません。

そんな中、こんな記事を見つけました。

「私は私のままでよい。私は私のままで価値がある。どんな状況になっても私の価値は変わらない」
「愛しているよ。あなたをそのままの状態で愛しているよ。これまで大変だったね、でももう大丈夫。あなたは愛されている」

的なことを、毎日自分に言い聞かせ続けると、本来なら幼い頃親から自然に育んでもらえたはずの愛情と、同じ効果の自己肯定感が育まれるそうです。

しかし、子供時代なんてそれなりに長いです。
その期間分自分に言い聞かせなきゃいけないとしたら、義務教育期間だって12年。
いまからやったって、58歳にならないと自分を肯定できないなんて…しびれるぜ、人生。

と、思っていたら、回数にすると1万回くらいと書いてありました。
朝昼晩10回ずつ言い聞かせたとして1日30回、1万回÷30回=約333日。

1年足らずで肯定できるじゃんかよ!
いままで何だったんだよ!
つーか、そんなもんで人生の強い土台ができるなら、あぁ…本当に幼い頃に愛情をもらっておくことがどんなに大切か…幼い頃の自分にたっぷり愛情を注いであげたい…と、タイムマシンも魔法もないのに夢想してしまいます。

そんなこの頃にタイムリーな、今回のご相談です。


*****

こんにちは。今回はよろしくお願いします。
劇作家・演出家として食べていけるようになってから現在までの15年間、がむしゃらに働いてきました。有り難いことに仕事が途切れることはなく、大変ではありましたが、そんな仕事一色の生活に満足していました。

ところが2年前に息子が生まれて以来、状況は一変しました。生活の中で最優先していたものが、仕事から子供に変わったのです。なるべく子供と一緒に過ごす時間を増やすために、仕事を減らそうと思うようになりました。

しかしご承知の通り不安定な仕事です。今が良くても三年後どうなっているかはわかりません。この歳で出来た子供ですから、彼が成人する頃には自分は還暦を過ぎています。それを考えると、まだ気力体力ともに充実していて、仕事の依頼がある今のうちになるべく多く働いて、家族の将来に備えるべきだとも思うのです。

すでに大きなお子さんを持つ知り合いからは「可愛いのは始めだけで、あとは憎たらしくなる一方だ」という意見も聞かれます。ならばやはり、その貴重な可愛い時期こそ一緒に過ごすべきなのか、それとも、そんないっときの可愛い時期に惑わされ、これまで培ってきた仕事のリズムや信頼関係を崩すのは馬鹿げているのか、日々悶々としています。

倉持裕さん(劇作家・脚本家・演出家 44才)

*****

正直、甘い考えを持っていました。
人生相談と銘打っているものの、軽いコラムの枠組みのように思っていました。

倉持さん…ド直球のご相談ではないですか。

まったく自分の手に負える気はしないので、人生相談のスペシャリストについて調べまくりました。
スペシャリストによると、

・相談者の名前を呼ぶ。
・相談者を受け入れる。
・べき論を振りかざさない。
・本人の気付きを大切にする。

ということを気にかけていると書いてありましたので、本職の方に則って、ド直球に返答させていただきます。

倉持さん。
悶々としたお気持ちの状態を、飾ることなくお伝えいただき、ありがとうございます。

実際のところ私には子どもがいないので、これからお返事することも、あくまでも妄想の範囲を超えられないことを先にお詫びいたします。

まず、倉持お父さん、もうすでにありがとう、です。

先に私も述べました、お子さんが幼い頃に与えられるべき親からの愛情の土台を、倉持さんは既に着々と築いている。そして、なんならもっと時間を設けて築きたいと思っている。

そして、そのための時間を設けるには、いままでの自分の時間軸だと無理が生じてきているのですね。

はっきり言うと、絶対どちらか一方を選べるものではありません。

そして、答えはもう出ているように思います。
いまはきっと、お子さんとの時間をとても大切にしたいのですよね。

とはいえ、人は働かなければ生活してゆけません。
倉持さんがおっしゃるように、この先生きていく準備のためにはいま働いておく必要もあります。

しかし近頃思うのは、仕事というものは本当に自然の流れでやってくるもののように思います。そしてそのまま、自然の流れでやっていくもののようにも思うのです。そして、そうしてやっていく仕事のほうが、ささやかながら結果が出ていくような気もしています。

ですから、自らお仕事を減らす…という思いではなく、この先のご家族との人生のために自然にやってくるお仕事を、丁寧に選んでいく…というのはいかがでしょうか。

気持ちの問題だけで結果的には同じことなのかもしれませんが、倉持さんがこの15年間でがむしゃらにお仕事と向き合って来たことで、生きるためのお仕事、自分のためのお仕事、誰かのためのお仕事、いろいろな選択が可能な時期なような気がします。
そして、倉持さんの人生にあらたにお子さんが加わったことで、いままでとは違うお仕事の選択方法になったとしても、それはとても自然で豊かなことだと思います。

同じお仕事場付近にいる私としては、倉持さんの作品をどんどん世に出してほしい、来るお仕事全部やっちゃってください! という気持ちはもちろんモリモリありますが。

最近好きなのは、「なるべく」という言葉です。
ちょっと無責任な印象の言葉ではありますが、

「なるべく」そのようにしてみる
「なるべく」してそのようになる

など、余白があったり、結果その余白はこのためにあったのだ、と思えたりして、ちょっぴり身を任せられたりする、実家の座椅子のような言葉です。

倉持さんのこれからの人生も、息子さんが小憎らしく成長されるまでは、なるべく、お子さんとの時間をたっぷりと。
そして、既に小憎らしく成長した人間たちとの豊かなお仕事も、なるべく、たっぷりと。
だと、嬉しいです。

ラッキー待ち受け
Jinsei03

我が妹のいちばん可愛かった頃の写真です。
妹でさえ可愛かったのですから、ご自身のお子さんともなるとそうとう可愛いものなのでしょうね。
この後、どんどん小憎らしくなり、いまでは姉である私は、ヒエラルキー的に完全に下に見られています。
どうか、可愛らしい時間を大切に。

■倉持裕さんの今後の予定
M&Oplaysプロデュース「鎌塚氏、腹におさめる」
作・演出:倉持裕
8月5日(土)~27日(日)
本多劇場
他、名古屋公演、大阪公演、島根公演、広島公演、宮城公演、富山公演、静岡公演あり
【筆者プロフィール】
pro_iketani 

池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]
【舞台】 
「Little Voice(リトル・ヴォイス)」(作:ジム・カートライト、演出:日澤雄介)
2017年6月24日(土) 北九州ソレイユホール

こまつ座 第119回公演「円生と志ん生」(作:井上ひさし、演出:鵜山仁)
2017年9月8日(金)~24日(日)  紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA 

【TV】
NTV「残酷な観客達」
毎週水曜 24:59~25:29




えんぶ最新号好評発売中! 




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nikkan 

engeki

第2回 村岡希美さん(女優・劇団員 46才)

むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

もう…夏じゃないですか…。
太陽の思い通りになる季節がやってきますよ。
なんでしょう…あの太陽の独り勝ち感。

「あたし! あたしあたしあたし! ねえ! あたし! 暑い!? ねえ! 暑い!? 暑いっしょ!? フーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!」

みてーな。

わかってるよ…あなたがいないことには地球が大変だってことはわかってるよ…感謝してるよ…だからもうそんなにテンション上げないで…そっと見守っていてよ地球を…いや、どうしても地球に光をあてたいなら、池谷だけあてなくてもいいからさ…。

池谷、明るいものといったら、ロウソクの灯りから5mくらい離れた場所で精一杯な今日この頃です。

ここ一年間、がんばって自分をコントロールできるように努力した結果、生きづらさについては昨年より30%ほど削減されたように感じますが(当社比)、やはり時折、「人間が! 自分以外の人間たちが眩しすぎる!!」という感覚に襲われてしまうのです。

つい先日も、久しぶりにこのキラキラ恐怖症が発症。

仕事場など多くの方があつまるところに行く際に、自分以外のみなさんは、身体にも自然にもとってもよさそうなおしゃれソルトを小粋な小瓶に入れて持ち歩いていて、自分だけがとんかつソースを蓋なしで持ち歩いているような感覚です。

ちょっと動いたらこの場を汚してしまう…いや、でも汚したい…でも、汚していいような場所ではない…みたいな。

まあ、そんなことでしょっちゅうウジウジしている私を、何かと救済してくれる村岡希美さんが今回のご相談者です。

「何かと救済されてる人間が相談に乗れる立場か!」(太陽 46億年才)

という太陽からの暑苦しいクレームは受け流して、ご相談内容を。

*****
池谷のぶえ様。

わたしの悩みを聞いてください。

近頃、わたしは、月日の流れるのが早すぎて、とても困っています。

2017年のお正月を迎えてから今日まで(5月初旬)は、一瞬でした。

どんどん過ぎてゆく月日に、わたしの方がおいてゆかれそうで、不安です。

どうしたらいいでしょうか。



それと、もう一つ。

断捨離、が、上手く出来ずに悩んでいます。

思い切って、どんどん捨ててしまうのは、気持ちが良くて好きなのですが、うっかり必要なものまで捨ててしまうのが、悩みです。

それも、捨ててしばらくは気が付かず、いざ、使おう、と思った時に「ない!!」と気づいてとても困るので、こんな自分が嫌になります。



これまで、捨ててしまって困った物たちは、こちらです。



・お箸(なぜか、菜箸はたくさんあったのでそれを使いました)

・フライ返し(なぜか、オタマは2つあったのでそれでひっくり返しました)

・傘(ビニール傘も全て捨ててしまってたのですが、なぜか、日傘は2本あったのでそれを使いました、が、びしょ濡れになりました)

・羽布団(ありったけのジャージを重ね着してしのぎました)

・冬物のコート(慌てて買いにゆきました)

・缶切り(今だにその缶は開いてません)



まだ他にもあったと思うのですが、近頃、「これは覚えておこう」と思ったものも、すぐに忘れてしまうので、それも、悩みのひとつです。が、これは、噂の、老化現象、というものなのでしょうか。



以上が、近頃の私の悩みです。

お答えいただけたら、幸いです。

よろしくお願いいたします。

村岡希美さん(女優・劇団員 46才)

*****

村岡さんからのご相談を目にした瞬間に、いろいろなものを捨ててしまい困っているにもかかわらず、村岡さんにはこう言ってもらいたい…というセリフたちが思い浮かびました。

・お箸(なぜか、菜箸はたくさんあったのでそれを使いました)
「箸がないですって…? この両手は何のためにあると思っているの? 食べるのよ! その両手で! 掴みなさい! 米を!」


・フライ返し(なぜか、オタマは2つあったのでそれでひっくり返しました)
「ハンバーグ…私はあなたを、決してひっくり返さない! 全力でね! ただし、どうしてもひっくり返してほしい時は甘えてきてもいいのよ。私には、2つのオタマがあるわ…」


・傘(ビニール傘も全て捨ててしまってたのですが、なぜか、日傘は2本あったのでそれを使いました、が、びしょ濡れになりました)
「傘をさせですって…? そんなこと言ってはいけないわ。雨だって誰かに抱きしめてもらいたくて降ってるのよ…雨! いらっしゃい!」


・羽布団(ありったけのジャージを重ね着してしのぎました)
「ばかね…よくごらんなさい…羽よ。ふふっ…まだ寝ぼけてるのね」


・冬物のコート(慌てて買いにゆきました)
「寒くなんかないわ。私には、ウォッカと口紅がコート替わりよ」


・缶切り(今だにその缶は開いてません)

「開けてくださる? あら、缶切りなんて使うの? まだまだ坊やね。大人はね、想い出で開けるのよ…」


もう…村岡さんに言わせたいセリフたちですよね。
なんなら、このセリフを言ってもらうために、あえて必要なものまで捨てたのではないか…という気すらしてきます。

こんなふうに、艶っぽくて、慈悲深くいてもらいたいイメージがあるため、ついついキリリとしたところばかりを求めてしまいがちです。

私も、村岡さんとの演劇ユニット「酒とつまみ」をやる前までは、そうした印象が強かったように思います。

しかし実際、あれやこれやを互いに経た後の村岡さんの印象は、とても繊細で優しく、かつ、大胆ないい加減さを持ち合わせてる面白さを感じます。

つい先日も、村岡さんがお芝居を観に来てくれた後の飲みの席で、「のぶえちゃんのあの場面がとっても良かった…ほら、あの場面」と言ってくれたので、「あの場面ですか?」「もっとこういう感じだった」、「この場面ですか?」「いや、こんな感じ」、「じゃああの場面だ!」「違うかもしれない」、「もうこの場面しかないですよ」「違う」…という、自分が素敵にできたと思われる個所を申請するとすべて違うと言われる…という公開処刑を経験しました。

いままでの私の演劇への背景も理解したうえで褒めてくれようとした「繊細で優しい」村岡さん、その場面をまったく覚えていない「大胆ないい加減さ」の村岡さん…今回ご相談いただいた、断捨離の結果も、大胆ないい加減さ方面の村岡さんらしさが大活躍した結果なのかもしれません。

断捨離をすると、本当に必要なものが入ってくるといいます。
断捨離をしたことで、繊細で優しい村岡さんが大活躍できる、花ちゃん(ワンちゃん)という伴侶が入ってきたのだと思います。

これからもいろんな村岡さんが見られると思いますが、村岡さんが言うように、我々も1年が3ヶ月くらいに感じる年齢になってまいりました。

村岡さんが花ちゃんと暮らすようになってから2年半くらいでしょうか。
ワンちゃんにとっての2年半は、人間の年齢に換算すると20代半ばくらいまでの年月のようですね。

花ちゃんにとっては村岡さんと暮らすようになって既に20年ちょっと、ぎゅーっと幸せな日々なのかと空想計算すると、ワンちゃん時間で生活してゆくのもよいですね。

ちなみに、ワンちゃん時間ですと、人間の1年はワンちゃんの17年です。
お正月! と思ったらすぐ、セブンチーンのお正月なわけです。
こうなったら、もういくつ寝ることなく、いつだってお正月です。
餅をついたら、食べるひまなく、また餅をつく…そんな人生です。

毎日餅をつくなんて…そんな高いテンションには絶対についていけなくなるであろう池谷を、どうかこれからも救済お願いいたします。

ラッキー待ち受け
写真1

実は、私も12年の春に大規模な断捨離で自宅を大改造し、その夏に「やろう!」と思い立ったのが「酒とつまみ」でした。大きな断捨離には、大きなものが入ってきますね。ユニット名を決める際に考えていった個人メモです。
結果2人で話し合い、「酒とつまみ」という名前になりました…あぶねえ。やはり人間、自分以外の視点というのは大切ですね。
キラキラ恐怖症を克服し、ちゃんと人間と向き合えるようがんばります。

■村岡希美さんの今後の予定
イキウメ「天の敵」
5月16日(火)~6月4日(日)
東京芸術劇場シアターイースト
6月9日(金)~6月11日(日)
ABCホール

「鳥の名前」
7月22日(土)〜8月13日(日) 
ザ・スズナリ
【筆者プロフィール】
pro_iketani 

池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]
【舞台】 
「Little Voice(リトル・ヴォイス)」
(作:ジム・カートライト、演出:日澤雄介)
2017年5月15日(月)~28日(日) 
天王洲 銀河劇場 ほか、地方公演あり

こまつ座 第119回公演「円生と志ん生」
(作:井上ひさし、演出:鵜山仁)
2017年9月8日(金)~24日(日) 
紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA 

【TV】
NTV「残酷な観客達」
2017年5月17日(水) スタート
毎週水曜 24:59~25:29




えんぶ最新号好評発売中! 




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第1回 ブルー&スカイさん(劇作家・演出家 43才)

新しくはじまりましたコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

はじまったものの…人生相談したいのはむしろ私のほうです。

いったいこの先、私は何年生きていくのですか?
生きていくためにはどれくらいお金が必要なのでしょうか?
いつまで元気に働けるでしょうか?
働けなくなったらどうなるのでしょうか?
持ち家を持っておけばよかったです…。
堅実な職業についておけばよかったです…。
恋愛に本気を出しておけばよかったです…。
大量に昆布を煮ましたが、あまり美味しくないです…。

人生、いつだって迷うことばかりですよね。

私ごときに、人様の人生をあれこれ指南する度量などまるで持ち合わせておりませんが、なんだか人に相談したら、ちょっとばかしすっきりするではないですか。

どうかここを、人生のゴミ箱だと思って、何かを捨てに来ればいい…

…都会の暮らしに疲れて、岬の上にポツンと一軒建つカフェを数年前から始め、いまでは地元の人たちや、人生につかれた旅人たちが立ち寄り、ふと何かを取り戻す場所…

みたいに語りかけてみましたが、そんな度量も持ち合わせちゃおりません。
なにとぞ、本気の相談がある方は、そんな岬のカフェに行くがいいさ!

ということで、記念すべき第一回目のご相談です。

*****

自分は視力が悪いので、芝居を観に行くと、よほど舞台に近い客席に座れない限り出演者の方々の顔がまったく見えず声のみで誰なのかを判断するしかなく、この十年ほどの間ずっと困っています。ただ観劇時以外の日常生活にはそこまで支障がないため眼鏡やコンタクトを買う予定はありません。どうしたら良いでしょうか。
あともう1つ、大学時代から知ってくれている池谷さんなのでお聞きしたいのですが、大学時代から現在43才になるまでの間のどこらへんで僕は人生けっこう失敗してしまったのでしょうか?

ブルー&スカイさん(劇作家・演出家 43才)

*****

よっぽど近くないと顔が見えない…ということは、いままでブルーさんから演出を受けている間も、私たちが誰が誰だか認識されていなかった可能性もあるということですね。
2~3行のセリフに対して、15か所くらいダメ出しをもらっていたのも、もしかしたら私に対するダメ出しではなかったのかもしれない…といま気づきました。

一緒にお芝居をするようになってから15年ほど経っても、ブルーさんの演出に対して、初見で正解を出せたことがない…というか、楽日でも正解を出せたことがない…そうした劣等感を感じながらいままで生きてきました。

それもすべて、私が正解を出せていたかもしれないのにただ見えてなかったのだとしたら…いままでの私の人生どうしてくれるんですか。

池谷のぶえ(女優 45才)

さらに、「大学時代から現在43才になるまでの間のどこらへんで僕は人生けっこう失敗してしまったのでしょうか?」ということですが、ブルーさんに出会い、ナンセンスという世界に足を踏み入れたことで、私のスマホのメモ帳には

・壁中に味噌
・部屋の四つ角という四つ角にせんとくん
・天井から世界中のメガネがぶら下がっている
・ソファーにふりかけをかけてみる
・一口ずつかじってあるウインナーが36本
・部屋中にキャベツの千切り
・お手拭きの胡麻和え
・煮干しの家族
・肉団子サッカー
・タコとイカが7:3の割合で部屋にぎっしり
・ドンペリのグラスに煮干しを一匹ずつ
・店に馬が繋がれていて、店はどこまでも進んで行く
・ピアノの鍵盤をご飯と海苔にする
・真珠のごとき光を放つ紙袋
・家出貴族
・ひまわりの真ん中に何をいれるか?
・シースルー刑事
・ウォシュレットと戦って、何もかも負ける
・股を開いたら閉じる…それだけを信じてる

こういったメモばかりが記されています。
これが、女優45才のメモでしょうか?

女優45才といえば、思い浮かぶのは藤原紀香さんです。

藤原紀香さんが、果たしてこのようなメモをするでしょうか。
想像するに、世界のこと、社会のこと、結婚生活のこと、健康のこと、美のこと…そうしたことでしょう。

そういった意味でも、大学時代にブルーさんに出会ったことで、私の人生も失敗しました。
安心してください。ブルーさんひとりではありません。

演劇を観る際に、眼鏡やコンタクトを作ろうと思わないのも、それほどまでして観たいものでもないからだと思います。きっと本当に観たいものは、人は観ようとするでしょう。

それ以前にブルーさんは、どっかから何かを感知して拾って来ては、独特な脳経路を通して、奇跡的なものを産みだすという特殊能力をお持ちです。

そして、その能力によって、私をはじめ、一部特殊な人たちから尊敬され続けている唯一無二な存在であることを、人生の失敗だとは思わずに。

きっと、そうしたことが見えずらいのも、視界がぼやけているからだと思います。

お金払って、眼鏡かコンタクトを作りなさい。
数千円で、スクール水着とか、女性の裸とかが、よりはっきり見えるようになるよ。

ラッキー待ち受け
今回ご相談にご協力をいただいたブルー&スカイさんには、スマホの待ち受けに最適なラッキー画像をプレゼント。
もし人生の岐路があったとしたら、確実にこの頃だったのでしょう。次の岐路には早々に気づきますように。
01_jinsei

■ブルー&スカイさんの今後の予定
フロム・ニューヨーク「そろそろセカンドバッグ」
5月31日(水)~6月4日(日)
下北沢OFFOFFシアター


【筆者プロフィール】
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池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]
【舞台】 
「Little Voice(リトル・ヴォイス)」(作:ジム・カートライト、演出:日澤雄介)
2017年5月15日(月)~28日(日) 天王洲 銀河劇場 ほか、地方公演あり





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日刊☆えんぶラインナップ

池谷のぶえの人生相談の館

松崎ひとみサムナツ活動日記

一十口裏の妄想危機一髪

粟根まことのエッセイ「未確認ヒコー舞台:UFB」

松永玲子のエッセイ「今夜もネットショッピング」

ノゾエ征爾のフォトエッセー「桜の島の野添酒店」

植本潤(花組芝居)vs坂口真人(演劇ぶっく編集長)対談「『過剰な人々』を巡る♂いささかな☀冒険」

ふれあい動物電気

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小野寺ずるのお散歩エロジェニック

池谷のぶえの国語算数理科社会。

南信州・駒ヶ根だよりby劇団サムライナッツ

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