第5回 黒田大輔さん(俳優・39歳)

むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

絶賛、戦い中です。
もちろん、夏と。

夏以外に、何と戦う必要がありましょう。

朝起きれば暑い、昼外に出れば暑い、夜寝れば暑い…なんですか? この代り映えしない、ただ暑いことだけを押し付けてくる機微のない季節。

朝まで生夏悪口…という番組があるなら、朝まで夏の悪口を言いたいですが、夏のために何で朝まで起きとらんといかんのじゃ! という悪口をまず言いたい。

もうみなさま、おわかりになりましたね。
夏が嫌いです。

とうもろこしは大好きです。
ここが、ジレンマです。

誰のおかげでとうもろこしを食えてると思ってんだ!? あぁん!?
と夏から胸ぐらをつかまれたら、そっと目を閉じて夏にされるがままになるしかない立場ではあります。

いや、そもそも、昔から夏が嫌いかといったら、そんなこともないのです。

若い頃は、花火大会、夏祭り、プール、海水浴、昆虫採集、ラジオ体操、夏の恋…夏休みの行事は人並みに好感を持っていました。

しかし現在、

花火大会…すんごく遠くから偶然見かけるなら可。ただし、涼しいところ。
夏祭り…すんごく空いてる露店だけひやかすなら可。ただし、涼しい夕方以降。
プール…すんごく空いてるプールに、浸かってるだけなら可。
海水浴…少し離れたところから眺めるだけなら可。ただし、涼しいところ。
昆虫採集…不可。季節関係なく、彼らとは一定の距離を保っていきたい。
ラジオ体操…春と秋と冬なら可。
夏の恋…可だけど、気配がない。なんなら、春も秋も冬もない。

こうして、夏の行事を何もかも受け付けない身体になってしまいました。

とにかく、暑いことがすべてを嫌にさせます。
そして、自分が汗っかきであることも大きな原因です。
しかし、30代前半までむしろ汗っかきではなかったのです。
クーラーなんて必要のない身体だったのです。

32~3歳のころからいきなり、夏にドバーッと汗が出る体質になってしまい、それからは夏と共存できないようになりました。

だって、汗って、すごくがんばってるみたいじゃないですか。
私、すごくがんばらない性質なのに、とても不本意なのです。

がんばってる人やアスリートなのに、汗が出にくい人たちに、わけてあげたい、汗…。
輸血のようなシステムにはならないのでしょうか。
いくらでも人助けできるのに…。

おめーの汗なんか誰がほしがんだよ! という世界中からの罵声は、きっと蝉の声ですね…あとひと月ほど、夏と戦っていこうと思います。

さて今回のご相談は、そんな夏に久しぶりにお仕事が一緒だった方からです。

*****

深刻な相談になってしまいますが、何卒宜しくお願いします。

レバ刺し・ユッケが食べたくて仕方ありません。どうすればいいでしょうか?

また、レバ刺し・ユッケを法律で禁ずるこの国に対して、心を冷静に保つことが困難です。なにか良い方法はないものでしょうか?

宜しくお願い致します。

黒田大輔さん(俳優・39歳)

*****

人生相談の館コラムが始まってからというもの、なかなか神経を研ぎ澄ます必要のあるご相談が多かった中、どうしてやることもできない相談をありがとう、黒田くん。

黒田くんと初めて出会ったのはいつだったのかしら…もはや、まったく覚えていません。
何度か共演したり、何度かばったりあったり、その度に特に懐かしい感じも、久しぶりな感じもあまりしない…不思議な存在の黒田くん。

数年前、京都で仕事の時、丁度同じく京都で仕事中だった黒田くんと落ち合いごはんを食べたのですが、私が初めての太秦デビューでド緊張していたら、甥っ子さんか姪っ子さんが黒田くんにくれたという、お守りの缶バッチを貸してくれました。

その缶バッチを、先日ようやく返すことができたので、そのお礼もかねての今回の人生相談ですので、真摯に回答せねばなりません。

1. 魔法を使う
2. タイムマシンに乗る
3. 総理大臣になり国を変える
4. 外国へ行く
5. 疑似食を作る

おおまかに考えて、上記5つに絞られるでしょう。
では、ひとつひとつ、具体的に検証していきましょう。

1. 魔法を使う…使えやしないさ。
2. タイムマシンに乗る…乗れやしないさ。
3. 総理大臣になり国を変える…変えてよ黒田くん。
4. 外国へ行く…韓国とかオーストラリアとかで食べられるらしいわね。とりあえず、これが一番現実的ね。
5. 疑似食を作る…マグロのお刺身とアボカドを細く切って、ごま油、塩、コチュジャン、卵黄、すりおろしニンニク、胡麻、醤油で混ぜるのよ。なんとなくユッケよ。酔っぱらって食べれば、なんならユッケよ。

一度失ったものは、なかなか戻ってはこないわね…そして、二度と会えないかと思うと、無性に会いたくなるものよね…だから、レバ刺しとユッケのことばかり考えてしまう。

レバ刺しとユッケのことは、中学時代と高校時代だと思ったらいいんじゃないかしら。
もしくは、レバ子とユッコという、元カノだと思ったらいいんじゃいかしら。

いずれにしても、黒田くんの人生を通過していった美しい想い出なのよ、レバ刺しとユッケは。

とはいえ、想い出を現実的として向き合うには、

外国へ行くこと。
馬レバーや鶏レバーへの愛情の扉も開くこと。
国を変えるために、選挙に出ること。

この3つね。
応援するわ。特に選挙は。
がんばって! 黒田くん!


ラッキー待ち受け
rebasashi
2012年6月、最後のお別れの記念に撮影したレバ刺しの画像です。
いまだに消せないほど、私も彼らの大ファンでした。
ですので、黒田くんの気持ちはとてもよくわかります。いつか、この画像を缶バッチに加工して、お守りとして渡せる日がくるとよいですね。
それまで、待ち受けにしてください。

■黒田大輔さんの今後の予定
森山直太朗劇場公演「あの城」(作・演出:御徒町凧)

9月14日(木)〜10月1日(日)@本多劇場

http://naotaro.com/anoshiro/

月と雷」(監督:安藤尋)

10月7日(土)テアトル新宿ほか、全国順次公開


【筆者プロフィール】
pro_iketani 

池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]
【舞台】 
2017年9月8日(金)~24日(日)  紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA 
こまつ座 第119回公演「円生と志ん生」(作:井上ひさし、演出:鵜山仁)




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nikkan 

engeki

第4回 平田敦子さん(女優)

むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

先日、とある企画で、高校演劇部を取材させていただきました。

自分も学生時代ずっと演劇部だったので、どんなノスタルジックが待ち受けていようかとドキドキしながらの取材だったのですが、なんでしょう…高校生たちの演劇へのシンプルな向き合い方に、あれこれごちゃごちゃ考えすぎな自分の演劇への向き合い方を反省しました。

高校生曰く、一緒にやってるみんなが面白いと思えるものをやっている…のですって。
これは、とても純粋で難しいことだと思うのです。

劇団などの仲間同士でもそうした状況を続けるのは困難ですし、ましてや、作品の度にあらゆるところから人々が集うプロデュース公演などでは、作品に対する共通認識を持てるか持てないかさえ、いつもギリギリな状況です。

なるべくみんなが面白いと思うものを…という、思いやりとセンスの擦り合わせが素敵ですね。私よりも30歳くらいも若いのに…。

だって、センスとか擦り合わせんの、超めんどくさくないっすか?

あ…いま、猛烈に暑くてぇ、いろんな体勢でコラム書いてたんっすけどぉ、どんな体勢でもあちぃんでぇ、結果、道端に座るヤンキーの体勢で書いてんっすよぉ。なもんで、言葉遣いもなんとなく…さーせん。さーせん、せんぱい。

せんぱい…そう、自分の時代の演劇部との共通点があったとすれば、先輩後輩関係がとても風通しが良いように感じました。

学生時代、1~2年歳が違うのって、ものすごくヒエラルキーを感じたものですが、演劇部という部活動の中ではそういえばあまり感じたことがなかったように記憶しています。

あと、夏合宿というものをやるんだ~というのも、共通点でした。
やったなぁ…夏合宿。
いま振り返れば、なんの進展もない夏合宿。
ただただ、仲間たちで夜の学校に宿泊するのが目的のような夏合宿。

演劇部なのに、早朝バスケ、朝ごはん、昼ごはん、夜ごはん、肝だめし、ガールズトーク、くらいしか覚えてないよ…お稽古なんて果たしてしていたのだろうか…。

それで十分、合宿をやった気になっていたし、楽しかったわけですが、いま、早朝バスケ、朝ごはん、昼ごはん、夜ごはん、肝だめし、ガールズトークを2~3日やれって言われても、泣いて断るもの。

特に、早朝バスケと肝だめしを毎日やるなんて無理っすよ、せんぱい。

ということで、今回の人生相談は、ついに大せんぱいのご相談に着手してしまいました。

いままでは、ほぼほぼ同年代のみなさまからの人生相談でしたので、ある程度の不躾な物言いがあったとしても、許してもらえるのではないだろうか…という甘い期待がありましたが、ついに大せんぱいです。

いよいよ、人生の相談にのっている場合ではないのです。
こちらが、相談させていただくべき立場なのです。

しかし、日ごろ思っていることをぜひともお聞きしたい大好きな方々に、大せんぱいたちが多いというのも現実なのです。

では…勇気を持って、いってみましょうか。

*****

これまでは
「好きな人には好かれたいけど嫌いな人には好かれなくてもいい」
という態度を貫いて来ましたが、年齢を重ねてきて最近は
「凄く嫌いな人以外にはとりあえず好かれたい」
と思うようになってきました。
でもそれってとっても難しいのですね。
なので私の事をよく知っているのぶえさん、私の嫌なところ、ダメなところを片っ端から言って下さい。
そしてその中で治せそうなものがあったらその治し方を教えて下さい。
ほんの少しでいいから良い人になりたいです。なれるでしょうか。

平田敦子さん(女優)

*****

ほらっ!! もうっ!! 絶対答えにくいじゃないですか、せんぱい!!

しかし、人生相談をいただけますか? と、お願いしたのは自分です。
ここは責任を持って、嫌われることも覚悟の上でお答えさせていただきます。もちろん嫌われたくないですけど…。

私が感じる敦子さんには、敦子さん憲法、もしくは、敦子さんルールなるものが存在するように思います。
しかしそれらは、超シャイで、超寂しがり屋で、超繊細で、超嘘が嫌いで、超乙女で、超人生の節目を大事にする…という、敦子さんの中核の部分を守るために存在している高らかな城壁のように超思います。

私がこのように「超」という言葉を羅列することに、敦子さん憲法上ではことのほか厳しく、いまこのコラムを読みながらもイラっとさせてしまっていると思いますが、私などはあえて敦子さんのその反応ほしさがために「超」を使ってしまう場合などもあります。

何かこのように、私のようなおふざけだったりでも、愛情だったりでもですが…人から敦子さんに対する発信に対してとても敏感で、なんなら微粒子レベルの発信に対しても敏感に反応し、時に城壁を守るために、バババババババ!! という音が聞こえてきそうな守備体勢に入ることがあるように思います。

「好き? これでも好き?」という音が。

私も、表現方法は違うかもですが「好き? これでも好き?」という守備体勢派なので、なんとなく同じ音を感じてしまうのですが、もし違っていたら本当に申し訳ありません。

そしてもしかしたら、そうした守備体勢によって、相手を緊張させてしまったり、警戒させてしまったりして、その状態を「好かれない」と感じる場合もあるのかもしれません。

「凄く嫌いな人以外にはとりあえず好かれたい」ということですが、凄く嫌いな人以外の人数すべてから「好かれる」というのは、なかなか尊く果てしないことだと思います。

しかし、「凄く嫌いな人以外にはとりあえず嫌われない」ということでしたら、守備体勢を少しでも緩めて、敦子さんというお城の庭を誰でも見学できるような状態にすることで、近づけるような気がします。

さて、好かれる好かれない問題とは直結するわけではありませんが、
「私の嫌なところ、ダメなところを片っ端から言って下さい」
というご要望にも真剣にお答えしなければなりません。

戦士のように城壁を守らんとする敦子さん丸ごとひっくるめて大好きですので、不謹慎ではありますが、もし敦子さんがこの先どうにかなってしまったら、とっても悲しく寂しい。

そういう意味で、この先敦子さんに元気でいていただくために、ぜひとも改善していただきたい点を下記させていただきます。

しかし、お答えするにはプライベートに関わる単語が必要になってきますので、そのへんは私の大好きな「ヒヨコ」に置き換えて回答させていただきます。

・ヒヨコを開けてみましょう。そして、新しいヒヨコを買いましょう。
・ヒヨコのために、ヒヨコをヒヨコしていきましょう。
・ヒヨコが入ってきたら、ヒヨコしていきましょう。
・なるべくヒヨコを使わないで、ヒヨコできるようにしていきましょう。

敦子さんはヒヨコに関しても「ヒヨコは一匹まで!」と厳しいです。
9ヒヨコも使ってしまいました…ヒヨコ部分につきましては、後日直接お会いした時に、超ビクビクしながらお伝えさせていただきます。


ラッキー待ち受け
敦子さんとご一緒した舞台「マクベス」の時の写真です。
この姿で、開演前から客席に潜んでいたのですが、それに気づいたお客様が「サインお願いできますか?」と言って開いたページが、敦子さんのページでした。私はラーメンズさんとお仕事をしたことがないのですが、「ラーメンズさんとの作品観ました!」と、言っていただけたりもします。
こうして敦子さんとは、お仕事をシェアしあっております。やってないお仕事が2倍に増えてラッキーです。
またいつかご一緒できますように。という想いをこめて、ラッキー待ち受けにしてください。魔除け的ですが。

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■平田敦子さんの今後の予定
・ドラマ「居酒屋ふじ」
テレビ東京 毎週土曜深夜0時20分〜
・舞台「おねだり」

9月26日(火)〜10月1日(日)
新宿シアターサンモール

10月5日(木)〜6日(金)

・グリコICEBLITZ PR動画


【筆者プロフィール】
pro_iketani 

池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]
【舞台】 
2017年9月8日(金)~24日(日)  紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA 
こまつ座 第119回公演「円生と志ん生」(作:井上ひさし、演出:鵜山仁)




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第3回 倉持裕さん(劇作家・脚本家・演出家 44才)

むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

不安になると心臓がバクバクしてしまう、いわゆる動悸というやつでしょうか。いままで数回経験しましたが、自分を自分でコントロールできないあの独特な恐怖感は、できればもう経験したくないものです。

その、最後の動悸から1年が経ちました。
奴が再びやってこないようにするためには、なんだかちょっとやそっとの工事では修正不可能な気がして、自分の土台から掘り起こすコツコツとした基礎工事を、地味に続けてきた1年間でありました。

まあ、動悸なんてのは、ただの動機で…言葉遊びは、ご自身のコンディションによってはイラっとしますでしょう? もしイラっとしたら、見ているこの画面を殴って気を紛らせてくださいね。

つづけます。
まあ、動悸なんてのは、ただの動機で…それまでの自分を続けていたら限界になってしまうという合図だったのだと、いまでは思います。もう、コップの水ギリギリの表面張力のような状態だったのでしょう。

自分のことをもっともっと、我慢したり、頑張ったりできる人間だと思っていましたが、そうでもなかった…のに我慢させたり、頑張らせていたのが、可哀想だったね自分…と、自分の出来なさ加減も愛おしく思えるようになった1年後の現在です。

我慢や頑張りといえば、お仕事に対してもそうした部分がたくさんあったのですが…まあ、お仕事というものは、ほぼほぼ我慢や頑張りで構成されているものでもありますが、その面でも約1年前にはコップの水が溢れてしまった感もありました。

ということで、全面的な自分リフォームに勤しんできた1年間。
以前に比べるとだいぶ楽な状態になってきましたが、やはりまだまだ翻弄されるのは、自己肯定感の低さです。

いろんな情報を紡ぎ合わせていくと、幼い頃からの愛情不足が一番の原因らしいですが、そんなこといわれたって、タイムマシンも魔法もないこの世では、いまさらどうにかできるものでもありません。

そんな中、こんな記事を見つけました。

「私は私のままでよい。私は私のままで価値がある。どんな状況になっても私の価値は変わらない」
「愛しているよ。あなたをそのままの状態で愛しているよ。これまで大変だったね、でももう大丈夫。あなたは愛されている」

的なことを、毎日自分に言い聞かせ続けると、本来なら幼い頃親から自然に育んでもらえたはずの愛情と、同じ効果の自己肯定感が育まれるそうです。

しかし、子供時代なんてそれなりに長いです。
その期間分自分に言い聞かせなきゃいけないとしたら、義務教育期間だって12年。
いまからやったって、58歳にならないと自分を肯定できないなんて…しびれるぜ、人生。

と、思っていたら、回数にすると1万回くらいと書いてありました。
朝昼晩10回ずつ言い聞かせたとして1日30回、1万回÷30回=約333日。

1年足らずで肯定できるじゃんかよ!
いままで何だったんだよ!
つーか、そんなもんで人生の強い土台ができるなら、あぁ…本当に幼い頃に愛情をもらっておくことがどんなに大切か…幼い頃の自分にたっぷり愛情を注いであげたい…と、タイムマシンも魔法もないのに夢想してしまいます。

そんなこの頃にタイムリーな、今回のご相談です。


*****

こんにちは。今回はよろしくお願いします。
劇作家・演出家として食べていけるようになってから現在までの15年間、がむしゃらに働いてきました。有り難いことに仕事が途切れることはなく、大変ではありましたが、そんな仕事一色の生活に満足していました。

ところが2年前に息子が生まれて以来、状況は一変しました。生活の中で最優先していたものが、仕事から子供に変わったのです。なるべく子供と一緒に過ごす時間を増やすために、仕事を減らそうと思うようになりました。

しかしご承知の通り不安定な仕事です。今が良くても三年後どうなっているかはわかりません。この歳で出来た子供ですから、彼が成人する頃には自分は還暦を過ぎています。それを考えると、まだ気力体力ともに充実していて、仕事の依頼がある今のうちになるべく多く働いて、家族の将来に備えるべきだとも思うのです。

すでに大きなお子さんを持つ知り合いからは「可愛いのは始めだけで、あとは憎たらしくなる一方だ」という意見も聞かれます。ならばやはり、その貴重な可愛い時期こそ一緒に過ごすべきなのか、それとも、そんないっときの可愛い時期に惑わされ、これまで培ってきた仕事のリズムや信頼関係を崩すのは馬鹿げているのか、日々悶々としています。

倉持裕さん(劇作家・脚本家・演出家 44才)

*****

正直、甘い考えを持っていました。
人生相談と銘打っているものの、軽いコラムの枠組みのように思っていました。

倉持さん…ド直球のご相談ではないですか。

まったく自分の手に負える気はしないので、人生相談のスペシャリストについて調べまくりました。
スペシャリストによると、

・相談者の名前を呼ぶ。
・相談者を受け入れる。
・べき論を振りかざさない。
・本人の気付きを大切にする。

ということを気にかけていると書いてありましたので、本職の方に則って、ド直球に返答させていただきます。

倉持さん。
悶々としたお気持ちの状態を、飾ることなくお伝えいただき、ありがとうございます。

実際のところ私には子どもがいないので、これからお返事することも、あくまでも妄想の範囲を超えられないことを先にお詫びいたします。

まず、倉持お父さん、もうすでにありがとう、です。

先に私も述べました、お子さんが幼い頃に与えられるべき親からの愛情の土台を、倉持さんは既に着々と築いている。そして、なんならもっと時間を設けて築きたいと思っている。

そして、そのための時間を設けるには、いままでの自分の時間軸だと無理が生じてきているのですね。

はっきり言うと、絶対どちらか一方を選べるものではありません。

そして、答えはもう出ているように思います。
いまはきっと、お子さんとの時間をとても大切にしたいのですよね。

とはいえ、人は働かなければ生活してゆけません。
倉持さんがおっしゃるように、この先生きていく準備のためにはいま働いておく必要もあります。

しかし近頃思うのは、仕事というものは本当に自然の流れでやってくるもののように思います。そしてそのまま、自然の流れでやっていくもののようにも思うのです。そして、そうしてやっていく仕事のほうが、ささやかながら結果が出ていくような気もしています。

ですから、自らお仕事を減らす…という思いではなく、この先のご家族との人生のために自然にやってくるお仕事を、丁寧に選んでいく…というのはいかがでしょうか。

気持ちの問題だけで結果的には同じことなのかもしれませんが、倉持さんがこの15年間でがむしゃらにお仕事と向き合って来たことで、生きるためのお仕事、自分のためのお仕事、誰かのためのお仕事、いろいろな選択が可能な時期なような気がします。
そして、倉持さんの人生にあらたにお子さんが加わったことで、いままでとは違うお仕事の選択方法になったとしても、それはとても自然で豊かなことだと思います。

同じお仕事場付近にいる私としては、倉持さんの作品をどんどん世に出してほしい、来るお仕事全部やっちゃってください! という気持ちはもちろんモリモリありますが。

最近好きなのは、「なるべく」という言葉です。
ちょっと無責任な印象の言葉ではありますが、

「なるべく」そのようにしてみる
「なるべく」してそのようになる

など、余白があったり、結果その余白はこのためにあったのだ、と思えたりして、ちょっぴり身を任せられたりする、実家の座椅子のような言葉です。

倉持さんのこれからの人生も、息子さんが小憎らしく成長されるまでは、なるべく、お子さんとの時間をたっぷりと。
そして、既に小憎らしく成長した人間たちとの豊かなお仕事も、なるべく、たっぷりと。
だと、嬉しいです。

ラッキー待ち受け
Jinsei03

我が妹のいちばん可愛かった頃の写真です。
妹でさえ可愛かったのですから、ご自身のお子さんともなるとそうとう可愛いものなのでしょうね。
この後、どんどん小憎らしくなり、いまでは姉である私は、ヒエラルキー的に完全に下に見られています。
どうか、可愛らしい時間を大切に。

■倉持裕さんの今後の予定
M&Oplaysプロデュース「鎌塚氏、腹におさめる」
作・演出:倉持裕
8月5日(土)~27日(日)
本多劇場
他、名古屋公演、大阪公演、島根公演、広島公演、宮城公演、富山公演、静岡公演あり
【筆者プロフィール】
pro_iketani 

池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]
【舞台】 
「Little Voice(リトル・ヴォイス)」(作:ジム・カートライト、演出:日澤雄介)
2017年6月24日(土) 北九州ソレイユホール

こまつ座 第119回公演「円生と志ん生」(作:井上ひさし、演出:鵜山仁)
2017年9月8日(金)~24日(日)  紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA 

【TV】
NTV「残酷な観客達」
毎週水曜 24:59~25:29




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日刊☆えんぶラインナップ

池谷のぶえの人生相談の館

松崎ひとみサムナツ活動日記

一十口裏の妄想危機一髪

粟根まことのエッセイ「未確認ヒコー舞台:UFB」

松永玲子のエッセイ「今夜もネットショッピング」

ノゾエ征爾のフォトエッセー「桜の島の野添酒店」

植本潤(花組芝居)vs坂口真人(演劇ぶっく編集長)対談「『過剰な人々』を巡る♂いささかな☀冒険」

ふれあい動物電気

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小野寺ずるのお散歩エロジェニック

池谷のぶえの国語算数理科社会。

南信州・駒ヶ根だよりby劇団サムライナッツ

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