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第9回 佐藤真弓さん(女優)

むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

NODA・MAP「足跡姫 時代錯誤冬幽霊」、ホリプロ「Little Voice」、こまつ座「円生と志ん生」、シアターコクーン・オンレパートリー2017「24番地の桜の園」。

演出では、野田秀樹さんとは13年ぶりくらいでしたし、日澤雄介さん、鵜山仁さん、串田和美さんとは、初めてのご一緒でした。
こんなにも、初めての演出家さんだらけの年は初めてです。
終わってみれば、みなさんそれぞれに刺激的で、それぞれに演劇を愛し、それぞれに毒のスパイスと優しさのある演出家さんでした。

初めてご一緒した出演者の方々も、ざっと数えてみたら40数人。
さらにスタッフさんや、映像関係のお仕事などを入れたら軽く100人は超えているのでしょうね。出会いだらけです。

よく、なかなか恋愛できない方たちのインタビューで、
「出会いがなかなかなくて…」
という回答がありますが、声を大にして言いたい。
「出会いだらけだって、できないものはできないのよーーーーー!!!!」

むしろ、出会いがない方がよっぽど言い訳になります。
あれだけ出会っといて何してたのよ!! という気持ちになりますよね。
まあ、出会うために仕事をしているわけではなくて、仕事をしてたら出会うことになるのですけれども…。

来年も、いったいどれだけの新しい方々に出合えるのでしょうか。
楽しみでもあり、寂しくもあり。
なんたって、このお仕事、一つの作品が終わるとすぐサヨナラですものね。
作っては消え、出会っては去り…の繰り返し。

せめて、辛い出会いや、辛いサヨナラがなるべくありませんように。

さて、今回のご相談は、とーってもチャーミングな先輩からです。

*****

のぶえちゃん、こんにちは。どうぞよろしくお願いします。



お米を筆頭に炭水化物が我慢できません。

いろんな数値が気になる年頃ですので、夜遅くには控えよう、少し軽めしようなどと思うのですが、いざ白いごはんを目の前にするとフラフラとお茶碗一杯によそってしまいます。20時以降白米は我慢(この時点で結構甘い)、というルールを作ったところで、「みんなで食べる時は良い事にする」、「ふるさとのおにぎりはOK」。などと簡単に覆すルールを作ってしまうのです。自分の意思の弱さにほとほと呆れます。助けてください。



あと、もうひとつ、夢占いみたいな相談で恐縮です。

身長を172センチにしてあげるよ、といわれたらどうするべきでしょうか?

今150センチぴったりです。中途半端にあと1、2センチ伸びるのだったら今のままで良いと思っているのですが、172センチとなると話は別です。そうなった時の想像も3か月に一度くらいはします。満員電車で頭や肩に肘を置かれて休憩されることもなくなるでしょう。何がしかのギフトか、または科学の飛躍的な進歩でそんな日が来ないとも限りません。慣れ親しんだ150か老後を172で生きるのか。万が一のその日にあたふたしないようにアドバイスをいただきたいのです。

佐藤真弓さん(女優)

*****

もう、このご相談を目にした、真弓さんの知り合いの方々でしたら、先ほどの私の魂の叫び、

「出会いだらけだって、できないものはできないのよーーーーー!!!!」

と同じくらいの圧と音量でこう叫ぶでしょう。

「真弓さんは、そのままでいてーーーーー!!!!」

つまりは、炭水化物をあまり制限してほしくないですし、身長もいまの身長でいてほしいのです。それが、真弓さんの素敵さなのですもの!

いやしかし、これはあくまで我々外部からの真弓さんへの願望であって、ご本人の気持ちではありませんものね。
なるべく真弓さんが今後もご飯を食べたくなるように、なるべく真弓さんが今後も高身長に憧れないように、こっそり仕向けていけたらと思います。
これを読んでいるみなさんも、ご協力お願いいたします。
「※」このマークを出したら、「そうだ!そうだ!」と言ってくださいね。

つい最近聞いたのは、食べ物を一口食べるごとに「年齢の数だけ咀嚼する」必要があるそうです。我々だったら一口たべるごとに40ウン回咀嚼しなければいけません。少しの期間やってみましたが、無理でした。
真弓さんも、どうしてもお米を食べたくなってしまったとき、とりあえず年齢の数だけ咀嚼法を試してみてください。
でもきっと、無理です…。

「青色は、食欲を減退させる」らしいですね。
いますぐ、青いサングラスを購入してください。
お米やパンを見つけたら、すぐさまそれを掛けるのです。
でもきっと、外して食べちゃうと思います。

「冷めたお米を食べる」
お米は、冷めることで「レジスタントスターチ」という成分が発生し、食物繊維と同様の働きをするのですが、胃や小腸で消化されないため、でんぷんなのにエネルギーになりにくい特性を持っているそうです。
温かいお米ではなく、冷めたお米を食べるようにしてください。
でもきっと、すぐチンしちゃうと思います。

いっそのこと、お米を職業に取り入れてみてはいかがでしょうか。
お米マイスター、お米アドバイザー、お米ソムリエ、ごはんソムリエ
、米・食味鑑定士、ごはん検定~めしけん~
などの資格があるようです。
でもきっと、勉強している間にお腹が空いて、お米をたべちゃうと思います。

もうきっと、お米と真弓さんの間には、何度も輪廻転生する間に何かしらの縁があるのでしょう。もしかしたら、身体の見つけにくい場所に「※」印の痣があるかもしれませんよ。

※の合図で「そうだ!そうだ!」言ってくれたみなさま、ありがとうございました。
身長に関するご相談にまいります。引き続き、よろしくお願いいたします。


平均身長が高い国ランキング1位は、オランダだそうです。
女性は、平均身長171cmほどとか。真弓さんが想いを馳せる身長に近いですね。

実は約200年前までは、オランダはヨーロッパの中では身長が低い国だったそうです。その後、現在に至るまでの急激な身長の伸びは世界各国と比べても類がなく、オランダだけ。その理由は、

・酪農国なので乳製品(牛乳やチーズ)を多く摂取しているため。
・日射量の少ない寒い地域に住む民族のほうが体が大きくなると言われているため。

などの説があるようです。
真弓さん、至急、寒く暗い場所で牛乳を飲み、チーズを食べるのです!
そしたら170cm前後が体験できます!

しかし、約200年かかります。
安心してください。200年生きない限り172cmになることはないでしょう。

我々も、あと数十年すれば立派なおばあちゃんになってまいります。なんなら、その足音もヒタヒタと聞こえてきてはおります。

もうおばあちゃんに向かうしかないこの先、いかに素敵なおばあちゃんになるか…ということが大事です。

真弓さんは、現段階でかなりかわいいおばあちゃんになりそうな素質が満載です。そのためには、いまの真弓さんのビジュアルも大きな要素です。
どうか、真弓さんは150cmの方を選択してください。

150cmの真弓さんが縁側にちょこんと座り、お茶でも飲んでいようものなら、近所の人たちがやたらとおにぎりやら、お菓子やらを持ってくるでしょう。
真弓さんが、美味しいものを美味しそうに食べてくれることで、周りの人を幸せな気持ちにしてくれるのです。
※※※※※

微妙な才能ですが、15年くらい先の地味な社会の進歩をひっそりと当てる能力を持ち合わせています。
小学生の頃、「21世紀を描く」という図工の課題で、同級生たちが空中歩行や、宇宙旅行などの壮大な未来を描いていた時、自動販売機でなんでも買えるようになる地味な絵を描いて通信簿を下げた実績があります。
実際いま、自販機でなんでも買えるではないですか!
あてにならん通信簿め!

だから、大丈夫。
満員電車で休憩されてしまう件については、今後の超高齢化社会、いつか高齢専用車両なるものができるのではないかと予測します。真弓さんが休憩場所になるようなことはありません。

真弓さんがかわいらしいおばあちゃんになる頃、私もおばあちゃんです。
そうなっても、一緒に美味しいものが食べられてたらいいですね。


ラッキー待ち受け
池谷コラム
ご相談内に出てきました、演劇人御用達のお店、下北沢「ふるさと」の名物おにぎり。売り切れてしまっては困るので、早い時点で注文しておくのがセオリーです。出来立てのあつあつ感、なんとも言えない塩気、ふんわりしながらくずれない握り感、何の具が入っているかわからないドキドキ感、添えられてるきゅうりの漬物のナイスアシスト…すばらしいポテンシャルのおにぎり。そしてそれを掲げる真弓さんの画像が見つかりました。
美味しいごはんに出合えるラッキー待ち受けです。

■佐藤真弓さんの今後の予定
青蛾館
男装音楽劇「宝島」
作:寺山修司
振付・構成・演出:スズキ拓朗
2018年2/3~11
東京芸術劇場シアターウエスト

猫のホテル
「秘境温泉名優ストリップ」
作・演出:千葉雅子
2018年4/3~11
こまばアゴラ劇場


【筆者プロフィール】
pro_iketani 

池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]
【映画】 
「DESTINY 鎌倉ものがたり」(監督・脚本・VFX:山崎貴)絶賛公開中!




『えんぶ8号』

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nikkan engeki

第8回 八嶋智人さん(俳優)

むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

今年最後の舞台、「24番地の桜の園」が開幕しました。
今年は舞台を4本…駆け抜けましたなぁ…。
来年は舞台を2本…半分じゃないっすか…。
どうしてこう、お仕事というものは平均的に穏やかにやってこないものなのでしょうね。

嵐のようにズザザーッとやってくるときもあれば、凪のようにピタリと何もこなかったりもする。

いや…考えてみれば、人生なんて平均的に穏やかな時などめったにありゃしないですね。平均的に翻弄されているものです。

現在公演中の「24番地の桜の園」も、自分にとってはまたまた出会ったことのない新鮮な現場であります。

演出の串田さんとご一緒させていただくのも初めてですし、ここはひとつ、いままで自分の国(自分の芝居)で使っていた通貨(やり方)は持たないで、新しい国に無一文で飛び込んでみよう! という志でお稽古をはじめたものの、「自分」というものはどこまでもくっついて来るものですね。

せっかく自国の通貨は持ってこなくとも、照れや、恥じらいや、かっこつけや、合理的な考え方や、自尊心やらの、無駄な装飾品はつい手放せず持ってきてしまう。やっかいであります。

そんな中、この方は、自国の通貨も、装飾品も持たず、なんなら全裸で世界中を旅できるのではないか? という偉大な先輩からのご相談です。

*****



①僕はどうしてもふざけてしまうのですが、どうしたらいでしょうか?

②僕は池谷のぶえさんのファンで、初めての舞台共演なのに、からみがなくてガッカリしています。この胸のモヤモヤをどうしたら良いですか?

③で、リアルな相談ですが、街にいると見る人見る人、知り合いかなと思ってしまいます。そのせいで、よく店員さんに「あれ? 初めましてじゃないですよね?」と声をかけ、けげんな顔をされます。僕は変でしょうか?

④僕は、落ち着きないですか?

八嶋智人さん(俳優)

*****

八嶋さんとのはっきりした出会いは覚えていないのです。
小劇場界の交流の中でふわ~っと出会って、いつのまにかふわ~っとお世話になりまくっていますね。

でも、20年近くふわ~っと交流してきたのに、いままで一度もきちんと共演できたことがなかったのですよね。

③で、リアルな相談ですが、街にいると見る人見る人、知り合いかなと思ってしまいます。そのせいで、よく店員さんに「あれ? 初めましてじゃないですよね?」と声をかけ、けげんな顔をされます。僕は変でしょうか?

よく人間には、何度も輪廻転生してきた人と、まだ数回しか転生していない人や、初めて生まれてきた人がいる…とか言うではないですか?
それに倣うならば、八嶋さんはあきらかにいま地球上にいるだいたいの
人々とどこかの人生で出会ってるくらい、何度も転生を繰り返しているのではないでしょうか。

もうきっと、八嶋さんの中ではみんな本当に知り合いなんだと思います。
初めて出会った人の家に行ったとしても、ササッとカギを開け、そこの住人がいつも置いているカギ置き場にジャラッとカギを置いて、そこの住人がいつも座っているであろう席の一番近くにストンと座ることができる…そんな能力が、八嶋さんにはあるのだと思います。

すぐにでも立派な大泥棒になれそうだな…とも思いますし、なんなら私が勝手に思い描く八嶋さんの性質はルパン三世に似てますね。
そう考えると、カムカムミニキーナの松村さんが銭形警部に思えてきました。そうなると、不二子ちゃんは奥様でしょうか。

①僕はどうしてもふざけてしまうのですが、どうしたらよいでしょうか?

そして八嶋さんには、不二子ちゃんに襲い掛かる時のルパンのように、パンツをスパーンと脱ぐのが上手なイメージがあります。

稽古中、いろんなことに興味を示し乗っかっていく八嶋さんに「どうしてそんなにいろいろなことに興味がわくのですか?」と尋ねると、「その時鳴った音や、声や、出来事や、そうしたことにとにかく身体が反応してしまうのだ」と言っていましたね。

私は生きづらい人間なもので、生きやすくなるためのわりといろんな手段をためしてきましたが、よく出会うのは「過去でも未来でもなく、その瞬間を生きろ」的な言葉です。

八嶋さんはまさしくそう生きているのですね。
そして、八嶋さんはふざけてしまったな~と思ったことでも、周りにとっては救いになっていることもたくさんたくさんあると思います。

④僕は、落ち着きないですか?

地球上のあらゆることに身体が反応してしまうのですから、そりゃ落ち着く方がおかしいです。

今回、稽古場でも席が近かったので、出会って以来初めてじっくり八嶋さんを観察することができましたが、常に何かをするか、何かしゃべっていましたね。
大堀さんに「ちょっとは考え事とかしたら!?」と言われて、2秒くらいだけ考え事をしていた姿を見て、これはもう素晴らしい落ち着きのなさだ! と確信しました。

けれども、いざ八嶋さんが中心となって何かを動かす…という場面になると、誰よりも落ち着くのはなぜでしょうか。

「にんじんだ! にんじんだ! わーい!」と飛び跳ねていたウサギのようだった状態から急に、崖に立つ一匹の虎のように霧をまとい、まわりとの温度を数℃下げる体勢に入る。そして、チェスのように的確に駒を進める。

もう、ほら、ルパン三世ですよ。
もう、ほら、八パン三世ですよ。

②僕は池谷のぶえさんのファンで、初めての舞台共演なのに、からみがなくてガッカリしています。この胸のモヤモヤをどうしたら良いですか?

ほんと、初めての舞台共演ですね。
そして、殆どからみがありませんね。

しかし絡みはないものの、お稽古場でも近くの席で、こんなにもがっつりと同じ時間を共有しているのは初めてで、いままで私が勝手に八嶋さんに抱いていたイメージとは違うものもたくさん見えてきて新鮮です。

なんだか、八嶋さんにはいつも頼っていいような気がしてしまっていて、何かと寄りかかってしまってきましたが、いざ八嶋さんが困った時や癒されたい時や楽しみたい時などに、何一つ力になれない自分の非力さを実感しています。

幸い、今の現場では癒しになる方も何人かいるようですし、先日は八嶋さんと丁々発止に渡り合える小池の栄子ちゃんも観劇に来てくれ、それはそれは楽しそうな八嶋さんを見ることができて、本当によかったです。

私はすぐに地蔵のように外界をシャットアウトしてしまい、何も力になれず、自分のことに精一杯な人間で、本当にすみません。

もし転生して、もう一度役者人生を歩くとしたら、生まれ変わってみたい人生は、女性だったら木野花さん、男性だったら八嶋さんなのです。

どんな景色が見えるのでしょう。
きっと、地蔵の私には思いもよらない景色が見えているような気がするので、憧れてしまうのです。

現在やっている舞台「24番地の桜の園」の構成に似せて、ご相談をシャッフルしてお答えさせていただきました。

いいえ、答えというより、八嶋さんと出会ってから今日までの、記憶と懺悔です。

ラッキー待ち受け
Attachment-1

八嶋さんからいただいた、金箔名刺。金沢の金箔職人さんからいただいたそうです。スマホケースに入れておいたら、お稽古運があがりました。なんだ、お稽古運って。人生相談の館始まっていらいの、本当に待ち受けらしい待ち受け画面です。

■八嶋智人さんの今後の予定
シアターコクーン・オンレパートリー2017「24番地の桜の園」
作:アントン・チェーホフ
翻訳・脚色:木内宏昌
演出・脚色・美術:串田和美
11/9~28@Bunkamuraシアターコクーン
他、松本公演、大阪公演あり

カムカムミニキーナ2018年春公演@座・高円寺1

BS朝日『百年名家』

NHK『チョイス』

テレビ新広島『そ~だったのかンパニー』

テレビ愛知『極上ライフ 大人の秘密基地』


【筆者プロフィール】
pro_iketani 

池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]
【舞台】 
シアターコクーン・オンレパートリー2017「24番地の桜の園」
(作:アントン・チェーホフ、翻訳・脚色:木内宏昌、演出・脚色・美術:串田和美)
11月9日(木)~28日(火)  Bunkamuraシアターコクーン 
12月2日(土)~3日(日)  まつもと市民芸術館
12月8日(金)~10日(日)  森ノ宮ピロティホール




『えんぶ8号』

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nikkan engeki

第7回 大堀こういちさん(俳優)

むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

真夏から携わってきました、こまつ座「円生と志ん生」がいよいよ千穐楽をむかえました。

いやぁ…暑い夏でした。
もうかれこれ46年間夏を経験しているわけですけれども、毎回よくあんな季節を乗り超えて生きてきたな…やればできるんだな…人間ってすごいな…夏のおかげで、秋になるころにはめっきり人間賛歌です。

そんな暑い夏の全てを費やしたお芝居でしたが、今回なんと、お稽古期間&公演期間を通して、一度も泣いておりません。

いや、正確には、ノンフィクション番組を見たり、動物や人間の赤ちゃんの動画やらを見ては泣きましたが、お稽古がつらいとか、人間関係がつらいとか、人生がつらいとか、そういったことで一度も泣くことがありませんでした。

すごいことです。

一作品の期間にたいていは、ビービー泣きます。
お酒を飲んだ帰りなどは心が弱り、特にビービー泣きます。

お芝居でギャランティーをいただいているのか、泣いてギャランティーをいただいているのかわからないほどの比率の時もあります。

そんな時に比べたら、今回は快挙といってもいいでしょう。
毎回よくあんな泣きながら乗り超えて生きてきたな…やればできるんだな…人間ってすごいな…めっきり自分賛歌です。

そんな、こまつ座「円生と志ん生」と交差するようにして、シアターコクーン「24番地の桜の園」のお稽古もはじまりました。

今回も一度も泣くことなく、引き続き快挙を目指したいと思いますが、そんな現場で頼りになる先輩からのご相談です。

*****



この年齢になると、なかなか相談する相手もいなくなり、誰か相談にのってくれる人はいないものかと途方にくれていたところでした。よかった。こんな夢のようなところがあったんですね。なんでもいいという事でしたので、私の行き場の無い悩みの相談にのってください。



途方に暮れているその1

◎先日、打ち合わせをしていると私のテーブルの上に縮れた毛が一本。
まさかこれは「あの毛?」このところ私のところに縮れた毛が寄ってきてるようです。どうしたらいいでしょうか。



行き場のないその2

◎このところ、胸が大きくなってきました。

おじさんにもブラが必要なんじゃないかと悩んでいます。「天使のオジブラ」というのを考えました。どうしたらいいでしょうか?


途方に暮れてるその3

◎鼻毛に白髪が出て来ました。
染めるべきか抜くべきか。どうしたらいいでしょうか?



行き場のないその4

◎生まれ変わっても男になりたいと思っております。でも、それはワガママなのかもしれないと思っています。どうしたらいいでしょうか?



途方に暮れてるその5

◎池谷さんが稽古が終わると風のように帰ってしまいます。引き止めるにはどんな罠が必要なんでしょうか?



その6

◎朝の献立がなかなか思いつきません。

どうしたらいいでしょうか?



その7
◎
「幸せ」ってなんでしたっけ。

どうしたらいいでしょうか?

まだまだ池谷さんには相談に乗ってほしいのですが、今回はこの辺で。

どうぞよろしくお願いします。



「24番地の桜の園」で共演させて頂いている

大堀こういちでした。

大堀こういちさん(俳優)

*****

途方に暮れているその1

◎先日、打ち合わせをしていると私のテーブルの上に縮れた毛が一本。
まさかこれは「あの毛?」このところ私のところに縮れた毛が寄ってきてるようです。どうしたらいいでしょうか。
→私も、縮れた毛のフリーダムさについては長年疑問に思ってきました。やつらは大概「下着」という檻の中にいるはずなのに、なぜか床の片隅に集っていたりします。しかし、机の上にまでなんて、アクティヴですね。
いったいやつらは、檻の中からどのようにして脱出してくるのかは本当に謎ですし、一度科学的に追跡した番組などを見てみたいものですが、やつらの縮れを生じさせるのは女性ホルモンとされ、更年期を境に縮れを失い直毛化するそうです。これから先の高齢化社会、もうめったに出会えなくなるものなのかもしれません。
きっと、やつらがいる場所は、若者がたくさん集っていた場所なのです。一本一本がノスタルジーなのです。そして、やつらの生え変わりとともに、若者たちが成長していった証なのではないでしょうか。我々も、いつまでもやつらを縮れさせ続けたいものですね。



行き場のないその2

◎このところ、胸が大きくなってきました。

おじさんにもブラが必要なんじゃないかと悩んでいます。「天使のオジブラ」というのを考えました。どうしたらいいでしょうか?
→少し前に男性のブラについて世間がざわついた記憶がありますが、大堀さんの元へもついにその風が…。いまや楽天などでも気軽に買えるようですし、なんなら一度お試しになってみるのも良いかもしれません。女性の端くれからの印象ですが、ブラによって生活のオンオフが区切られる利点もあります。しかし、やはりおじさまには天使ではなく、ちょっとワルい感じでいていただきたいので、レースやシルクなどではなく、一見胸毛に見紛うブラなどはいかがでしょうか。これなら、更衣室で着替えをする際にも、「ああ、大堀さん毛深いんだな…」と思われる程度で済みます。
それはさておき、男性でも女性ホルモンの数値が大きくなると胸が出てくる場合もあるようです。そして、肝臓の状態が悪いと、増加した女性ホルモンを分解できずにお胸が出てきたりすることもあるそうです。お身体お気を付けください。



途方に暮れてるその3

◎鼻毛に白髪が出て来ました。
染めるべきか抜くべきか。どうしたらいいでしょうか?
→私も最近はめっきり白髪祭りです。頭髪などは、1ヶ月に1回は染めないと根元が気になるようになってまいりました。その他の箇所も祭り囃子が聞こえ始めております。初めの頃は、このイタチごっこがこの先ずっと続くのか…と悲しい気持ちになっておりましたが、最近では雪に思えてきました。白髪を見つけると、「あら、今年も…」みたいな気持ちです。雪でなくともいいと思います。桜でも、お金でも、自分がいままで頑張って生きてきたから歳とっちゃったんだわ…という愛おしい対象として、ぜひ鼻毛の白髪を愛でてあげてください。男性は、白髪によって色気の効果も出ますので、むしろ奴らを利用してやってください。


行き場のないその4

◎生まれ変わっても男になりたいと思っております。でも、それはワガママなのかもしれないと思っています。どうしたらいいでしょうか?
→これはもう、気合しかないように思います。今世でどんな偉業を残したとしても、じゃあそのご褒美にといって来世に性別を選択できるわけではないので、もうなにも手段がない場合は気合です。そして、私は生まれ変わっても女性になりたいと思っていますが、なぜ大堀さんがそんなに男性がよいのか、今度教えてください。その内容によっては私も来世、男性に生まれ変わりたくなると思いますので、大堀さんが男性に生まれ変わる席をとりあうライバルになるかもしれません。やはり、もう、お互い気合です。



途方に暮れてるその5

◎池谷さんが稽古が終わると風のように帰ってしまいます。引き止めるにはどんな罠が必要なんでしょうか?
→前記もいたしましたが、お芝居ごとにビービー泣くほど人間に苦手意識があるため、特に大勢の現場などは「私がいたって意味がない…」と思ってしまいがちです。今回も、まだまだお稽古初期なので、なるべく早く自宅で自分を取り戻したい感でいっぱいなのです。とはいえ、おしゃべりしたり飲みたい気持ちがないわけではありません。罠としては、階段ごとに美味しそうなものを置いておく…などが有効ですが、私より先にほかの生き物が捕獲される可能性が高いのでお勧めできません。余談ですが、先月高田聖子さんからご相談いただきましたアライグマ捕獲について、「キャラメルコーンをエサにしたら捕獲された」とのご報告がありました。美味しそうな罠ですと、私より先にアライグマが捕獲される可能性が高いのです。
現実的には、お稽古場で大堀さんと私の位置がものすごく離れているのも原因ですよね。だんだん、だましだまし、近づいて行くようにしてみます。そしたら、机の上にお互いそっとドングリを置いてみたりして、「今日は飲みに行きたいんだ…」みたいな合図をつくりましょう。



その6

◎朝の献立がなかなか思いつきません。

どうしたらいいでしょうか?
→これは、やっとまっとうな回答ができるご相談です。
土井善晴さんの「一汁一菜でよいという提案」という本を差し入れでいただいたのですが、「朝食はごはんと、お味噌汁と、お漬物やこんぶや納豆などごはんに添えるもの、この3つだけでよい」という、とても真摯でシンプルな朝食論です。お味噌汁は、お湯にお味噌を溶けばもうそれはお味噌汁なのであって豪華な具を思案する必要もなく、おかずを用意するのが苦痛であるのならば、お味噌汁に何でもその時あるものを入れてしまい、具沢山お味噌汁にしてしまえばよいというものです。私も、毎朝何を食べるかが楽しみであると同時に、前日や起きた時にあれこれ考えるのも面倒だったのですが、最近すっかりこのシンプルな考え方を実践していると、前日や朝に考えることがひとつ減って気が楽です。それに、具沢山のお味噌汁はなんとなく幸せな気持ちになります。そして、その時々にあるものを具にすることで、過去も未来もないような、今だけがあるような、なんだか不思議な安心感も感じるようになってきました。おすすめです。
でも、朝の献立をお考えなんて、素敵な旦那さん&お父さんですね!


その7

◎「幸せ」ってなんでしたっけ。

どうしたらいいでしょうか?
→私が大堀さんにお聞きしたいくらいですが…「幸せ」って、感じる時は一瞬で、それが過去のものになると、「幸せだったな…」というものに変化しますよね。人はきっと「幸せだったな…」がどんなにたくさんあったとしても、「幸せ」って感じる新しい一瞬を常に求め続けてしまうのだと思います。でも、幸せって、結局はとても地味なものなのじゃないかと、最近思います。色にしたら白や茶色です。ごはんやお味噌汁みたいな色です。実はずっと自分のまわりにあったりするのに、雲みたいに当たり前だと思ったり、土みたいに踏みつけていたりするんだろうな…とも思います。ある日何かの出来事で自分の中の視点が変わった時に、あれは幸せだったんだ…と気づけるものが、本当の地味な幸せなんだろうな…そして本当に気づきにくかったりするのだろうな…というのが、現時点での池谷の幸せ考です。きっといまも幸せなんだな…とぼんやりとした暖かさを感じながら生きていけたら、幸せですね。



もうなんだか、大堀さんと朝まで差し飲みしたような気分になってきました…。
また何か浮かびましたら、お酒の席で。

ラッキー待ち受け
池谷コラム写真

以前、「飲みに行きたいのに断られたらショックなので誘えない」人たちばかりが集まった稽古場で池谷が考案した、合図です。事前に小石をいくつか用意しておき、飲みたい人はそっと輪ゴムの中に小石を置いておきます。小石が1個のままだった場合、誘ったが断わられるというダメージをうけないままそっと帰れますし、小石が2個以上だった場合、誰かしら飲んでくれるということです。このシステムは特許がとれるんじゃないかというくらい画期的だったと思うのですが、その後どこの現場でも見かけたことがありません。いまのうちに特許を取りたいです。

■大堀こういちさんの今後の予定
シアターコクーン・オンレパートリー2017「24番地の桜の園」
作:アントン・チェーホフ
翻訳・脚色:木内宏昌
演出・脚色・美術:串田和美
11/9~28@Bunkamuraシアターコクーン
他、松本公演、大阪公演あり

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【筆者プロフィール】
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池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]
【舞台】 
シアターコクーン・オンレパートリー2017「24番地の桜の園」
(作:アントン・チェーホフ、翻訳・脚色:木内宏昌、演出・脚色・美術:串田和美)
11月9日(木)~28日(火) Bunkamuraシアターコクーン ほか、松本・大阪公演あり



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