むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

いろんなことに対してとーっても腰が重い私としては、お休みの日なども大概部屋でじっとしています。

もしもお地蔵さんの中で、アクティヴな性質ゆえに動きたくてウズウズしているお地蔵さんがいるのなら、なんなら変わってあげてもいいくらいです。

そんなんですから、行きたいところなどがあっても、既に知っている土地ならわりとホイホイ出かけるのですが、新規開拓の土地となるととたんにお地蔵さんスイッチが入り、妄想しただけですっかり旅行に行った気になったりしてしまうのです。

まあしかし最近特に、「もうあまり、残りの人生ないな…」という気持ちになるので…というと、「池谷さん、またはじまりやがった…」と思われそうですが、これが不思議とネガティヴな気持ちではなく、「もうあまり、残りの人生がなさそうだから、いろいろなことに出会いたいな…」という、ちょっとポジティヴな気持ちであります。

ということで、重い腰を上げて行ってきました上高地。

上高地くらいさっさと行けや! という何万というざわめき…受け止めましょうとも。
これが私の、地蔵にも勝る地蔵らしさ。Top of 地蔵のなせる業です。

そもそも、なんで急に上高地に行きたくなったのかも、あまり動機を覚えちゃいないのですが、ふ…と舞い降りてくる時ってありますよね。
あれをやろう、あそこに行こう、これはやめとこう、もう少し待とう…などなど。

こういう自分の勘のようなものを、わりと信頼しているので、「そうだ、上高地に行こう!」となったら、上高地に何かあるんでしょうね。

実際、あったな…ものすごくあった…。

景色の美しさ、満天の星空はもちろん、人と何かをすること、行動してみることの発見、そして、なんだかいろんな不必要なものを上高地に置いてきたような、すっきり感…上高地側としては、池谷のデトックス地蔵を置き去りにされちゃたまったもんじゃないでしょうけれど…。

まだまだ知らないことにたくさん出会いたい…と瞳を輝かせる47歳。
30年前に輝かせとけや! ってはなしです。

さ、ということで、残りの人生もあまりなさそうですので、今月のご相談を。

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のぶえさん!!この度は、このような素敵な館へお招き頂き、ありがとうございます!!

相談したい事は山ほどあるのですが、長居しすぎないよう、おじゃまします。


僕は、2016年に、劇団員が僕1人しかいないのにもかかわらず「劇団ぼるぼっちょ」と、劇団、と名乗り、劇団を旗揚げしました。
旗揚げ公演、第2回公演と、劇団は僕1人だけだったのですが、現在では、劇団員が、僕含め4人になり、なんだか劇団っぽくなってきました。せっかく、劇団っぽくなってきたので、もっと劇団らしくなりたいなぁ、と思いました。

劇団公演では、基本的に、僕のやりたい事をやっているわけなのですが、それで良いのでしょうか??僕、1人の時と、変わっていないわけです。

今だからこそ思う、のぶえさんが劇団に所属していた頃に、こういう事を皆んなでやっておけばよかった、とかあったりしますか?

そもそも、劇団って何なのでしょう??僕のためにはなっているのですが、皆んなのためになっているのか不安です。良い劇団のあり方って、どんなだと思いますか??

真面目な、そして答えがなさそうで、無限にありそうな相談ですみません。
過去、この館に、名だたる演劇人が登場しながら、いや、だからなのでしょうが、演劇の相談はなかったので、劇団初心者で無名という事に甘えて、このような相談にさせていただきました。

あと、最近、よく、どーしたものかと悩んでいるのですが、電車での移動中に、読書できるほどの集中力がなく、全く集中力のいらない携帯をいじる、ということをしていてもつまらない場合の、有意義な過ごし方を教えて下さい。

もっと長居したかったのですが、以上が、僕の相談です。どうぞ、よろしくお願い致します。



安倍康律さん(俳優、劇団「ぼるぼっちょ」主宰・作・演出)

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安倍さんとは、2011年に帝国劇場で上演された「風と共に去りぬ」で共演させていただきました。
まず、私みたいなドブ俳優がなぜ帝国劇場のお芝居なんかに呼んでいただけたのかも謎ですが、そこで出会った安倍さんも周りの人たちと比べてちょっと違和感のあるおかしな印象でした。

カーテンコール前になると、舞台袖に来て毎日まったく意味のないエチュードを仕掛けて来ては去っていくのです。それこそ、風と共に。

そんな毎日でしたから当然印象に残っていたのですが、数年後に劇団を始めるというではないですか。
そして、旗揚げ公演を観てみると、これがすごく楽しかった。

小さな空間で、ちょっとナンセンスなおとぎ話を、歌やダンスを贅沢に使って、ちゃんとやってくれるのです。

「僕のやりたい事をやっているわけなのですが、それで良いのでしょうか?? 僕、1人の時と、変わっていないわけです。」とのご相談ですが、劇団という集団になっても、「僕のやりたいこと」をやれている、それをやろうという仲間がいる、ということは、1人の時とまったく違うと思います。
とてもすごいことで、とてもステキな時期なんだと思いますよ。

私も、劇団生活を10年経験した身として、ああすればよかったかも、こうすればよかったかも…といったことはたくさんあります。

その中でも難しかったのは、その集団のステキなところを見続ける…ということです。
劇団も何年もやっていれば、悪いとこばかり見えてきてしまいます。そしてその蓄積でいつか、お別れがきたりします。

なので、なるべく劇団のステキなところを注目し続けられたらいいですね。
と同時に、ステキなところを作り続けていかないと、注目もできません。
そしてそれは、1人ではできません。

…ということに、私は劇団が解散してから気づきました。そんなこと当たり前だしわかってるつもりでいましたが、それを段々実感できなくなってくるのが劇団の切なさだと思います。

仲間が集まり始めているいま、一緒に作品をつくる人たちを大切に。
シンプルなことではありますが。

そして、「通勤中の過ごし方」ですが、私はぼんやりするのが大好きなので、私から何を言われても説得力がまるでないと思います。

私は強いて言うなら、通勤時間は、決して真剣にではなく、ぼんやり作品のことを考えていると、不思議な経路で何かがつながったり、ひらめいたりすることが多々あるので、脳をほったらかすという時間に使っています。

自己放牧…みたいなことでしょうか。
自分を泳がせる…みたいなことでしょうか。
無責任に通勤する…みたいなことでしょうか。

自分なんて適度にほっとけば、いずれなんかしだします。
私は地蔵のように動かないけど。

安倍さんはぜひこれからも、適度に動きますように。


ラッキー待ち受け
池谷コラム8月
こんなに待ち受けらしい待ち受けがあるでしょうか。
上高地の明神池です。帰宅後、ネットで上高地のことをいろいろ振り返っていたら、この場所がまさにパワースポットだと書いてありました。
後から知ると、それならもっと気合を入れて眺めておくんだった…と後悔するものですね。


■安倍康律さんの今後の予定
劇団ぼるぼっちょ
第4回公演 音楽劇
『ダンナー・ジェンダップ』
作・演出・作詞・作曲・振付、安倍康律
2018年9月7日(金)〜17日(月)
会場 ザ☆キッチンNAKANO

劇団ぼるぼっちょ
第5回公演 音楽劇
『クラブ シャーリー』
作・演出・作詞・作曲・振付、安倍康律
2018年12月7日(金)〜23日(日)
会場 ザ☆キッチンNAKANO


【筆者プロフィール】
pro_iketani 
池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]
【舞台】
「ゲゲゲの先生へ」(原案:水木しげる、脚本・演出:前川知大)
2018年10月8日(月・祝)~10月21日(日)   
東京芸術劇場 プレイハウス   
松本・大阪・豊橋・宮崎・北九州・新潟公演あり

【テレビドラマ】 

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