むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

人生の転換期というものが、みなさんも少なからずあるかと思いますが、私もまた最近ちょっとした転換期を迎えました。

低いところ、狭いところ、端っこ、うす暗いところ…こうしたすぐ気配を消せそうな場所は私の一番落ち着く場所でありますが、そこからついに「低いところ」が奪われてしまいました。

床生活から、椅子生活への転換です。

6月中旬頃からほんのり痛んでいた左足の膝が、7月中旬になっていよいよ本格的に痛くなり、一時は家の中を移動するのも半べそをかきながらくらいにまで達した膝痛。

近所の整形外科から始まり、鍼やら病院やら骨盤矯正やら、いろんな場所をあたりましたが原因がわからず。
こうなったら本格的な病院に行こうと、膝痛専門病院の予約をとり、病院から指定されたMRI施設で撮影もし、明日はいよいよ原因がわかるんだわ! と思っていたら、突然の完治。

はい、ここからオカルトです。

その日は撮影で富士山近くを訪れており、早朝に撮影が終わり最寄り駅まで送ってもらったのですが、夕方に予定されていた東京での衣装合わせまでだいぶ時間が空いていたので、時間つぶしに散歩でもしてから東京に戻ろうと駅近くの有名な神社まで行きました。

ちなみに膝痛といえども、立ち上がったり、しゃがんだり、階段を上り下りしたりということはとても痛かったのですが、歩くのはほぼ支障がなかったのです。

神社について、お参りして、駅まで戻り、さて東京へ帰ろうとホームへの階段を上がろうとした時に、

「ん?…痛く…ないかもしれない…いや、そんなことは…ん?…もしかしたら、階段…登れる?…いや、そんなことは…ん?…登れた…いや、たまたまだ…もう一段…ん?…登れる…痛くない…登れる…登れる!!…登れる!!!! 登れてるし痛くなーーーい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

少し痛くなくなった、段々痛くなくなった…くらいなら、ああ、そろそろよくなる時期だったのかもしれない…とも思いますが、この手のひらを返したような完治…どう説明がつくのでしょう。
いまだに何だったのかわかりません。

もちろん翌日の膝痛専門病院でもこの現象を話しましたが、失笑されるばかり。
しかしMRI写真は激痛時代のものなので、半月板損傷という、一応原因のようなものも判明しましたが、半月板自体には神経がないのでそこが痛むわけではないとか、半月板のことを調べれば調べるほど謎で。
じゃああの痛みはどこがどうして痛んでたんだか…そしてなぜ突然完治したんだか…結局わからないままです。

神社って…すげぇ。

わかったのは、このことのみ。
歳をとると、やたらと神社仏閣にすがりたくなる気持ちがやっとわかってきました。

とはいえ、現実的に半月板が損傷していることは確かなので、これ以上悪化しないようケアしていくしかありません。

おまたせしました、オカルトから床生活から椅子生活への転換に戻ります。

病院の先生によると、横すわり、あぐら、正座などの床での生活から、立ち上がったりしゃがんだりという床生活の動きは、膝にとても負担をかけているのだとか。
じゃあ、昔の日本人はどうして大丈夫だったのだろう…とも考えましたが、体重とかの関係もあるのでしょうかね。

私もつい2年前まではいまよりも18kgくらい重かったですし、随分と負担をかけ続けてきてしまっていたのかもしれません。

この先、ご迷惑をかけずに生きて行くには、生活を改善するしかありません。

なんか衝撃を吸収するインソール&靴、なんか膝付近を助けてくれるサポーター、なんか体幹を鍛えるクッション、なんか骨盤を矯正するクッション、なんか自動で筋肉を鍛えてくれる器具、なんか椅子生活できる椅子と机。

そんな、なんかたちを取りそろえ、いま私の部屋は、健やかに生活する意識の高いステキな女性みたいなグッズに満ち溢れています。

「体幹」という言葉もたくさん発しています。
いままで口にしたこともなかったわ…た・い・か・ん。

ストイックになってしまったらどうしよう…どうか神様、私がストイックにだけはなりませんように…!!

さて、そんな転換期をご近所で見守ってくださってる方が、今回のご相談者です。


*****
のびえさん、こんにちは!

何者でもない裏方の自分がこの館に招かれて人生相談に乗っていただくだなんて大変畏れ多いのですが大丈夫でしょうか…あれ?もしかして人生のピークってヤツですか?…なんか心臓バクバクしてきました…でもせっかくの機会ですのでバクバク心臓は握り潰してご相談させていただきますっ!

気持ちや計画はあるのになかなか行動に移せず完遂できません。とにかく頭の中の妄想タイムが長くあーでもないこーでもないと具体的に考えたり調べたりと準備だけは熱心ですが、行動力・実行力が足りていません。気付くとわりと時すでに遅しで機を逸しており、嗚呼もう今更だわね…となるので実質何もしていないも同然です。逆に無駄に時間を浪費しています。
仕事では〆切があるので何とかなっていますが、プライベートはほぼこんな状態です。断捨離を始めてメ◯◯リとかに出品しようと思った衣類の箱を積んだまま2~3年経過しています。10日前に必要事項を書き込み52円切手まで貼ったのに追加の10円切手を買わないまま応募ハガキの消印有効日が過ぎました。この相談内容もメールに下書きしていますが、未送信のままのメールが何通も入っています。他にも数え上げたらキリがないくらいのアレヤコレヤ…どうすれば“行動力の化身”となれるでしょう?この悩みが解決したら今後の人生が変わりそうです!(←他力本願&過度の期待)
どうぞよろしくお願いいたします☆

雨堤千砂子(グラフィックデザイナー)

*****

私も、妄想の化身なので、雨堤さんのお気持ちとてもよくわかります。
妄想をしたことで、やるべきことのある程度までの結果を出してしまうんですよね。妄想によってそれなりに体力も使うので、実行する時はすでに面倒くさくなっていたり…。

前に何かの文章で読みましたが、行動と実行というのは違うのだそうです。
そういった意味では、妄想も行動の一環ではあると思うのです。すでに行動はしているのですが、私たちに足りないのは実行部分なのだと思います。

ただ、なぜそんなに妄想をしてしまうのか…と考えた時に、きっと実行に面倒くささと怖さを感じているのではないでしょうか。

私の数少ない実行経験からすると、本当の実行は面倒くささと怖さはありながらも、その二人と両手をつなぎながらも気づけば発射していた気がします。

面倒くささと怖さを目で見える前に置いてはいけないのかもしれません。
後ろに置ければ最高ですが、せめて横に配置して目に見えないようにできたらいいですよね。

そして、見ないことというのは、ある意味、見ることだと思います。
ああ、私がこれからやろうとしていることは、私にとって面倒くさいし、怖いんだと、ちゃんと自分を受け止める。

その段階で発射できたらよいのですが、それでも無理な場合は、じゃあそれは何のため、誰のために必要なのかということを考える。

自分のためでもいいですし、何かのためでも、誰かのためでもいいと思うのですが、きっと実行に移せないのは、妄想が常にto be continued だからかもしれませんね。

なんでも結果を出せばいいというものでもありませんが、実行に移したい! という熱い想いがある場合は、妄想の決着をつけることが必要なのではないかと思います。

自分で書いておきながら、できるかなぁ…と自信がありませんが。

お仕事だと実行できる、というのも、仕事は必ず決着をつけなければいけないからかもですよね。

そしてほんとに今日、朝食の支度をしながら降りてきた感覚なのですが、いままで信じていた自分の生活速度と、本来の自分に合う生活速度というのは、必ずしも合っていないのかもしれません。

雨堤さんは、実行に移さなきゃ! と速度を速めようと思っているとしても、本当に自分に合っているのは、妄想をゆっくりしている時間の流れなのかもしれないですし。

自分には、本来もっとのんびりしたテンポが流れているような気がします。
ただ、人から求められて早いリズムにすることも嫌いではない気もします。
人から求められてそれが良いと感じたり言われたりしているうちに、とても速いテンポが通常になってしまい、なんだか少し疲れてきました。
本来のテンポはどんなんだったかなぁ…と、今日は朝から自分のために妄想中です。

できればすぐ実行できる体質になりたいですが、本当に必要な実行の時は、雨堤さんは何よりも早く実行できて、その後長い妄想をしていそうな気もします。

もう、実行なんて、本当に必要な時だけでいいような気もしてきました。
そんな妄想を…してしまいますね。


ラッキー待ち受け
FullSizeRender

妄想って、まだ見てないものや出会ってないものをあれこれ想像して、喜んだり恐怖したりしてしまうものですよね。
自分の膝を外から見てあれこれ考えていても、膝の中まではわかりませんでした。わかってから対応できる効率的なことはたくさんあるとも思います。
そういった意味では、実行を妄想のスタートにするというのも、合理的かもしれませんね。
ということで、実行という名のMRI写真を待ち受けにどうぞ。
左側の、骨と骨の間の白い筋が損傷なんですって。気の長い妄想をしていくとしましょうか。


■雨堤さんの今後の予定
KERA・MAP #008
「修道女たち」
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
2018年10月20日~11月15日
下北沢 本多劇場
ほか 兵庫公演・北九州公演あり
*宣伝美術・公演パンフレット担当


【筆者プロフィール】
pro_iketani 
池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]
【舞台】
「ゲゲゲの先生へ」(原案:水木しげる、脚本・演出:前川知大)
2018年10月8日(月・祝)~10月21日(日)   
東京芸術劇場 プレイハウス   
松本・大阪・豊橋・宮崎・北九州・新潟公演あり

【テレビドラマ】 

池谷のぶえ単行本販売中!
kick shop nikkan engeki