新しくはじまりましたコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。
はじまったものの…人生相談したいのはむしろ私のほうです。
いったいこの先、私は何年生きていくのですか?
生きていくためにはどれくらいお金が必要なのでしょうか?
いつまで元気に働けるでしょうか?
働けなくなったらどうなるのでしょうか?
持ち家を持っておけばよかったです…。
堅実な職業についておけばよかったです…。
恋愛に本気を出しておけばよかったです…。
大量に昆布を煮ましたが、あまり美味しくないです…。
人生、いつだって迷うことばかりですよね。
私ごときに、人様の人生をあれこれ指南する度量などまるで持ち合わせておりませんが、なんだか人に相談したら、ちょっとばかしすっきりするではないですか。
どうかここを、人生のゴミ箱だと思って、何かを捨てに来ればいい…
…都会の暮らしに疲れて、岬の上にポツンと一軒建つカフェを数年前から始め、いまでは地元の人たちや、人生につかれた旅人たちが立ち寄り、ふと何かを取り戻す場所…
みたいに語りかけてみましたが、そんな度量も持ち合わせちゃおりません。
なにとぞ、本気の相談がある方は、そんな岬のカフェに行くがいいさ!
ということで、記念すべき第一回目のご相談です。
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自分は視力が悪いので、芝居を観に行くと、よほど舞台に近い客席に座れない限り出演者の方々の顔がまったく見えず声のみで誰なのかを判断するしかなく、この十年ほどの間ずっと困っています。ただ観劇時以外の日常生活にはそこまで支障がないため眼鏡やコンタクトを買う予定はありません。どうしたら良いでしょうか。
あともう1つ、大学時代から知ってくれている池谷さんなのでお聞きしたいのですが、大学時代から現在43才になるまでの間のどこらへんで僕は人生けっこう失敗してしまったのでしょうか?
ブルー&スカイさん(劇作家・演出家 43才)
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よっぽど近くないと顔が見えない…ということは、いままでブルーさんから演出を受けている間も、私たちが誰が誰だか認識されていなかった可能性もあるということですね。
2~3行のセリフに対して、15か所くらいダメ出しをもらっていたのも、もしかしたら私に対するダメ出しではなかったのかもしれない…といま気づきました。
一緒にお芝居をするようになってから15年ほど経っても、ブルーさんの演出に対して、初見で正解を出せたことがない…というか、楽日でも正解を出せたことがない…そうした劣等感を感じながらいままで生きてきました。
それもすべて、私が正解を出せていたかもしれないのにただ見えてなかったのだとしたら…いままでの私の人生どうしてくれるんですか。
池谷のぶえ(女優 45才)
さらに、「大学時代から現在43才になるまでの間のどこらへんで僕は人生けっこう失敗してしまったのでしょうか?」ということですが、ブルーさんに出会い、ナンセンスという世界に足を踏み入れたことで、私のスマホのメモ帳には
・壁中に味噌
・部屋の四つ角という四つ角にせんとくん
・天井から世界中のメガネがぶら下がっている
・ソファーにふりかけをかけてみる
・一口ずつかじってあるウインナーが36本
・部屋中にキャベツの千切り
・お手拭きの胡麻和え
・煮干しの家族
・肉団子サッカー
・タコとイカが7:3の割合で部屋にぎっしり
・ドンペリのグラスに煮干しを一匹ずつ
・店に馬が繋がれていて、店はどこまでも進んで行く
・ピアノの鍵盤をご飯と海苔にする
・真珠のごとき光を放つ紙袋
・家出貴族
・ひまわりの真ん中に何をいれるか?
・シースルー刑事
・ウォシュレットと戦って、何もかも負ける
・股を開いたら閉じる…それだけを信じてる
こういったメモばかりが記されています。
これが、女優45才のメモでしょうか?
女優45才といえば、思い浮かぶのは藤原紀香さんです。
藤原紀香さんが、果たしてこのようなメモをするでしょうか。
想像するに、世界のこと、社会のこと、結婚生活のこと、健康のこと、美のこと…そうしたことでしょう。
そういった意味でも、大学時代にブルーさんに出会ったことで、私の人生も失敗しました。
安心してください。ブルーさんひとりではありません。
演劇を観る際に、眼鏡やコンタクトを作ろうと思わないのも、それほどまでして観たいものでもないからだと思います。きっと本当に観たいものは、人は観ようとするでしょう。
それ以前にブルーさんは、どっかから何かを感知して拾って来ては、独特な脳経路を通して、奇跡的なものを産みだすという特殊能力をお持ちです。
そして、その能力によって、私をはじめ、一部特殊な人たちから尊敬され続けている唯一無二な存在であることを、人生の失敗だとは思わずに。
きっと、そうしたことが見えずらいのも、視界がぼやけているからだと思います。
お金払って、眼鏡かコンタクトを作りなさい。
数千円で、スクール水着とか、女性の裸とかが、よりはっきり見えるようになるよ。
ラッキー待ち受け
今回ご相談にご協力をいただいたブルー&スカイさんには、スマホの待ち受けに最適なラッキー画像をプレゼント。
もし人生の岐路があったとしたら、確実にこの頃だったのでしょう。次の岐路には早々に気づきますように。
■ブルー&スカイさんの今後の予定
フロム・ニューヨーク「そろそろセカンドバッグ」
5月31日(水)~6月4日(日)
下北沢OFFOFFシアター