むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。
人生で初めて…と言ってもいいくらい、ここ数日、食欲がありません。
よく、「あ! 気づいたらもう夜。今日まだ何も食べてない!」みたいなことを言う方がいるじゃないですか。
ご飯を食べないまま、朝から夜までですって…?
ご飯以外にそんなに夢中になれることって、いったい何なのですか?
恋ですか? それとも、恋ですか? ひょっとして、恋ですか?
それならそれで、恋を食べて生きていけばいいので満腹でしょうが、恋なんかとんと最近食べてないもので、本当にただの食欲不振です。
ですから、「気づいたら何も食べていない」なんて、都市伝説だと思って生きてきましたが、もしかしたらその伝説を体験できるかもしれない…という期待を胸に劇場へ行くと、
何? ここは美味しい食べ物のテーマパークなの?
というような、差し入れの数々が並んでいるものですから、食欲スイッチが作動しはじめるのです。
このように冷静に書いていると、「家にあるものは美味しくないもの」と、胃が判断するようになってしまったのではないか? 本当に美味しいものにしか胃が反応しなくなってしまったのではないか…?
胃への教育方針が間違っていたのではないか。
夜遅く帰ってくるようになった胃。友人の家を泊まり歩くようになった胃。ドラッグストアで化粧品を万引きする胃。年の離れた男性と同棲し始めた胃。若くして身ごもる胃…もう、胃の概念がわからなくなってまいりました。
そんな食欲不振の秋。今回のご相談は、こちらです。
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こんな事、のぶえちゃんに相談していいものかと思うのですが…この夏、実家で過ごしていたのです。
前々から母から聞いてはいたのですが、庭の真ん中に、中身を食べられた亀の甲羅が落ちていたり、手水鉢に銀杏の実がぎっちり貯めてあったりしていて、何かいるとは思っていたのですが、お盆の朝方、キロキロ…グエッ!グエッ!という声と共に天井裏をドタドタ走り回る音がして、パッと窓の外を見たら、アライグマの群れがこちらを見て威嚇していました。
怖くて庭に罠を仕掛けたのですが、まだかかりません。
仮にもしこの罠にかかった場合も想像すると怖いです。
間も無く稽古も始まるので実家を離れなければならず、もしアライグマが逆襲してきたらと思うと心配でなりません。
業者に任せておけという話かもしれませんけれど、なにかお知恵を拝借できたらと…よろしくお願いします。ちなみにこれが罠です。
高田聖子さん(女優)
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人生相談を始めてまだ6回目ではありますが、まさかアライグマについてお答えすることになるとは想定外でした。
しかし人生なんて、いつアライグマが侵入してきても不思議ではありませんものね。私の人生と、アライグマの人生は交わることがないと決めつけておりました。反省です。
さっそく、「アライグマ」を検索します。「あらいぐまラスカル」が出てきます。ここまでは、想定内でした。
しかし、出るわ出るわ、アライグマの被害について、そして、その獰猛な性格について…。
・執着心が強い。
習慣性が強く、気に入った食べ物に執着する。
・手先が器用で力持ち。
蓋や重石をどかしたり、カギを開けるなど、一度執着されると防衛が困難になる。
・繁殖率が高い。
1歳で約66%、2歳以上になるとほぼ100%が繁殖し、死ぬまで下がらない。平均で3~5頭の子供を出産。生まれた子供の大半が生き残って、繁殖活動に参加する。
・群れで行動する。
子どもが自立する7月以降は、母子が集団で行動するため、一度の被害が多くなる可能性がある。
・子ども時代は可愛らしく、大人になると狂暴な性格に。
そして、アライグマは外来種で、もともと日本にいた生き物ではなく、幼少期のかわいらしい様子からペットの目的で日本に渡ってきたものの、大人になると狂暴になり手に負えなくなるため、山に放たれたりして増加したのでは? と言われているようです。
そして、平成16年からは「特定外来生物による生態系に係る被害の防止に関する法律」という法律の中で、アライグマは特定外来生物のリストに載り、人に危害を加えたり、農林水産業に大きな被害をもたらす生物として、いまやペットどころか指名手配的な立場になっているのですね…。
私もどっぷり「あらいぐまラスカル」世代なので、まさかアライグマの世界がそんなことになっているとは驚きました。最後の砦であろう動物園からも「飼えません」と断られてしまうほどの暴れん坊将軍なようで、もう、せめて外見が可愛くてよかったね…と思うしかありません。
これでブスだったら大変です。世間はブスに厳しいのです。もっと早い段階で駆除対象となっていたかもしれません。
とはいえ、実際アライグマによる被害は大変なようで、聖子さんのご実家近辺の市町村でも、アライグマへの対策や講習会や駆除計画や、いろいろ動いているようでした。
アライグマの性質にもありましたが、毎年どんどん増加する一方なわけで、これはもう個人個人で対策を打っても太刀打ちできるものでもありません。
なんなら、いつか人間の数を超えそうな勢いです。
そうなると、地域単位、市町村単位、もっと行けば国単位で考えなければいけないことのように思えてきました。
大学を卒業してから3年ほど、都市計画を作成する会社に勤務し、主に住民アンケートの報告書作りに携わっていたため、なんだかノスタルジックな調査です。
ということで、聖子さんのご実家のある町へ問い合わせをしてみました。
返答はこちらです。
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池谷 伸枝様
ご連絡頂いただき、ありがとうございます。
アライグマにつきましては、町により捕獲檻を設置し、捕獲する方法をとっております。
この捕獲檻につきましては、アライグマ被害を受けているおそれのある住宅等へ設置しており、町職員がご自宅に捕獲檻を設置に伺うこととなります。
なお、檻の中に入れる餌の補充等につきましては、設置依頼者にお願いしております。
また、檻の設置状況により、依頼された際に檻の空きが無い場合もあり、檻の空きがでるまでお待ちいただくこともありますので、ご了承ください。
斑鳩町役場 都市建設部 建設農林課
ご連絡頂いただき、ありがとうございます。
アライグマにつきましては、町により捕獲檻を設置し、捕獲する方法をとっております。
この捕獲檻につきましては、アライグマ被害を受けているおそれのある住宅等へ設置しており、町職員がご自宅に捕獲檻を設置に伺うこととなります。
なお、檻の中に入れる餌の補充等につきましては、設置依頼者にお願いしております。
また、檻の設置状況により、依頼された際に檻の空きが無い場合もあり、檻の空きがでるまでお待ちいただくこともありますので、ご了承ください。
斑鳩町役場 都市建設部 建設農林課
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聖子さんのご実家は、あの有名な「法隆寺」であります。
数年前、京都から足を延ばして行ってみましたが、「ここがご実家!?」と、そのあまりのスケールの壮大さから、聖子さんのただならぬ源を感じたものです。
アライグマの好きな場所として、神社仏閣、水辺、竹林、防風林、納屋などがあるようですが、全てを網羅していそうですものね…お気に入りな環境なのかもしれません。
そして、すでに罠もしかけていらっしゃるようですので、町から設置してもらっているものだったら、なんの回答にもならず申し訳ございません。
もし個人でしかけたものでしたら、町へのSOSをまずお勧めいたします。
そして、どちらにせよ、エサは、罠の付近に撒き餌をしないと通り過ぎることもあるようで、誘引エサは甘く油の匂いが強いもの、インスタントラーメン、パン、ドーナッツ、お菓子、から揚げ、煮干し、するめ、リンゴ、ブドウなどがいいようですが、鮮度を保つためにも、生ものより一番コスパがいいのはキャラメルコーンらしいです。
時期的には、2月後半頃から活動が始まり、3~6月頃が野外にエサもないので、罠による捕獲率が高くなるとのこと。
今頃の時期だと、自然界にエサがたくさんあるので、罠にかかりにくかったりもするようです。
いやぁ…長期戦ですね…そして、1年で数倍くらいに頭数が増えて行くわけですから、1家庭で2~3頭捕獲したところで根本的な問題の解決にならない気もいたします…。
そして、聖子さんがおっしゃるように、もし罠にかかったらかかったで怖いですし…。
最終的には業者さんに頼むのが一番だ…という答えは準備しているものの、その前に何か手段はないか…と調べておりましたら、撃退百貨店というサイトで「ウルフ尿」というものを見つけました。
天敵の尿を敷地外に撒くことによって、そこから侵入させないようにする撃退法らしいです。
なんといっても、名前が強そうです「ウルフ尿」。
尿に守られて生きる…敵に勝つためには、それも受け入れねばならないのかもしれません。
ぜひ、お試しください。
「あらいぐまラスカル」でも、ラスカルが初めて食べたとうもろこしの美味しさから覚醒し、隣人のとうもろこし畑を夜な夜な荒らしまくってしまって、人間との確執が出来てしまいました。
食べ物の中でとうもろこしが一番好きな私としては、なんとも他人事には思えない騒動ですが、食欲不振な昨今ではその食欲を少し分けてほしいくらいです。
そして、アライグマにもぜひTwitterをやっていただき、「あ! 気づいたらもう夜。今日まだ何も食べてない!」とひとこと呟いてから人里に降りて来てもらえると、人間側も心構えができるというものです。
まあ、どれだけ手先が器用でもTwitterまではやらないでしょうし、これから秋になり、捕獲が難しくなる時期ですし、どうか地域ぐるみ、町ぐるみで大きな対策が実行されると安心ですね。
ちなみに、いま公演中のこまつ座「円生と志ん生」で演出をされている鵜山仁さんは、聖子さんのご実家の隣町ご出身だそうですので、鵜山さんにもアライグマについて聞いてみます。
ラッキー待ち受け
実家…それは不思議なものが集う場所…。
どんな経路で実家にやってきて、どんな想いで飾るに至ったのか、まるでわからない池谷家実家の置物です。
どうかこのパワーで、アライグマがお山に帰っていきますように。
■高田聖子さんの今後の予定
劇団☆新感線「髑髏城の七人season月」
11/23~2018年2/21
@IHIステージアラウンド東京