むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

年が明けましたね。
年、明けすぎじゃないですか? 短いスパンで。

12ヶ月の間、絶対3~4ヶ月はすっとばして時が経ってますよね。
どうにも、地球のやり方が信じられないんですよ。
ぜったい自転、早くしてんじゃないかしらね。
みんな、地球を信じすぎだと思うの。

お正月恒例の箱根駅伝とかも、ゴールしたらすぐ走り始めても、ちょうど来年のお正月にゴールするくらいになると思うの…ってくらい、時が経つのが早すぎる!!

きっと、このコラムを書き終わる頃には夏ですよ…なんなのさ、地球!
もっと、誠意を見せてよ! 地球!

さて、理解できない時の速さは全部地球のせいにして、今年もあっという間の一年を生きていこうではありませんか。

といいながらさっそく年末の話に遡りますが、母親から郵便局やら銀行やらの手続きをしに来なさいと命令を受け、渋々と行ってまいりました。

母も今年75歳。きっと今後のことなどいろいろ考えて、少しずつ手を放して行こうということなのでしょうけど、そうした現実をなるべく考えないように日々過ごしているので、改めてきちんと対峙することになるとなんだかとても胸がきゅぅぅぅぅ…として寂しいですね。

舞台のお稽古や本番をやっている期間は、現実のあれこれは後回しにしてもいいような気もしているのですが、そのような夢の時間が終わると、ただただ現実です。

年末などは、まだまだ夢の時間にいようと、9つの忘年会を渡り歩いてみましたが、もうすっかりお正月も終わり、やはり、ただただ現実です。

今年は、舞台も少なめですし、現実と向き合う年なのでしょうかね。

ということで、今年一発目の現実的なご相談を。

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新年明けましておめでとうございます。

昨年『24番地の桜の園』では大変お世話になりました。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

新年早々ではございますが人生相談、何卒よろしくお願い致します。



家の鍵の閉め忘れがとても気になります。

鍵をかけて駅に向かって歩いている最中「あれ、鍵閉めたかな・・・うん、閉めた・・・本当に?・・・戻ろう」と確認しに帰ってしまいます。そして閉まっているのを確認して「閉まってる!忘れるな。」と心の中で強く思うのですが、また歩いている最中「あれ、閉めたかな?」と不安になります。

一度地方に向かう新幹線の中で不安になり、友達に見に行ってもらった事もあります。

どうしたらこの不安はなくなるのでしょう。よろしくお願いいたします。



ジグソーパズルが好きでたまに買ってはやり始めるのですが、途中で止めるのがとても難しいです。

どこまでやればきりがいいのか全然わからないのです。

例えば建物一つ完成すれば止めようと思っても、その建物の端っこに別の建物が出てきたりするのです!!

そうなるとそれを完成させずにはいられません。

少しずつ楽しむはずのジグソーパズル「今日は建物一つ出来た!明日も楽しもー♪」ではなく、「完成させなければ、、、完成させなければー!!!」と燃えてきてしまいます。もう彼らに釘付けで他の事が手につきません。

掃除もそうです。今日はこの場所だけ!と決めてやり始めたのに途中から違う所が気になって、また他の所が気になって・・・と1日が終わってしまいます。

煮込み料理もそうじゃないですか?もっと美味しくなれもっと美味しくなれと。

すみません、話しにもきりがなくなってしまいました。

どうかいい『きり』を教えてください。よろしくお願いいたします。

尾上寛之さん(俳優)



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尾上くんとは、年末の舞台「24番地の桜の園」で初めてご一緒させていただきました。

なので、まだ知り合って数ヶ月の間柄であります。
当然、尾上くんがどんな人物なのか、ひとかけらくらいしか知らないはずなのです…が、お芝居のお稽古や本番というものは、ほんとうに怖いくらいその人らしさが滲み出るもので。

今回のご相談を目にした時に、なんてイメージにぴったりなご相談なんでしょう…と思ってしまいました。

二つのご相談でもそうですが、お稽古場や本番の尾上くんもとても熱心に物事を考え、出来ていても心配し、念には念を入れて挑んでいたように思います。

そうか…それもこれも、鍵やジグソーパズルと繋がっていたのか…と思うとなんとも感慨深い。何の感慨だかわかりませんが。

まずは鍵についてですが、鍵をかけた後、心の中だけで「よし、閉めたぞ!」と確認するだけでは、人はすぐわからなくなってしまうのだそうです。
なので、鉄道職員さんのように「鍵、よーし!」と、指差し確認することが大切らしいですが、さらにそれも鍵に向かってではなく、2mくらい先にいる誰かを想定して声をかけると、さらに記憶に残るらしいですよ。

もう、鍵のエチュードですよ。
お芝居をやっていてよかったですね。すぐできるわよね?
ただ、周りにどれだけの視線があるか、恥じらいとの闘いではありますが。

しかし、人間は言葉の記憶よりも、映像の記憶の方がより残りやすいとのことなので、もうその毎日微妙に違う鍵エチュードを、動画で撮ったらいいのよ。
今後、映像のお仕事とかで、鍵をかけるシーンがあった時、あらゆるバリエーションの鍵のかけ方ができるようになっているという、「尾上に鍵をかけさせたら、右に出る者がいない」的なレジェンドになれるわよ。

それでもダメだというのならば、もう、初めは敢えて鍵をかけない。
そして「ああ…鍵をかけてこなかった…ああ…どうしよう」と、そのザワザワ感に浸ってから、おもむろに踵を返し鍵をかけに戻る。
先に心をザワザワさせておく作戦よ。
ちょっとした変態プレイでもあるから、あまり手を出さないほうがいいとは思うわよ。

それでも、それでもダメならば、私、素晴らしい案をひらめきました。
鍵をかけ終えた瞬間から、顔をぼっこぼこに叩きながらしばらく歩くのです。
痛かったら鍵をかけた証。
これ、絶対、安心して出かけられるでしょう?
安全には出かけられないけれどもさ。

でも、鍵をかけ忘れたって大丈夫よ。
本当に盗まれたくない大切なものは、ちゃんと尾上くんの中だけにあるでしょう…?

はい。一年分のいい言葉を結集したから、もう2018年分のいい言葉は残っちゃいませんよ。
ということで、「きり」についてはやさぐれて回答しますよ。


まず、建物の絵柄じゃないパズル買いな!
ぼんやりした…海しかないみたいな!

はい。こんな回答じゃ、さすがにやさぐれすぎているので補足しますが、尾上くんが「きり」を気にしていてよかったです。

なんとなく、きっちりと結果を知りたいタイプなのかしら? と思っていたので。

最後までいかなくてもいいことも、たくさんあると思うのよ。
最後までいってしまうと、楽しくなくなってしまうこともあると思うのよ。
答えは最後だけじゃなく、途中にもたくさんあると思うのよ。

「きり」というのは、途中の最後を決めてしまうことだと思うのね。
だから、「きり」なんかはつけなくていいと思う。
「やらなきゃいけない」ところまで進むんじゃなくて、自分の気持ちいいところまで進んでそこでやめればいいと思います。

ジグソーパズルを完成させて気持ちいいのなら、いろんなところを掃除したくなるのなら、煮物を美味しくなるまで煮たくなるのなら、そこが尾上くんの「きり」なのよ。

ただしそれが、「ぎむ」であっては、豊かな時間ではなくなってしまうと思います。
きっといまは「ぎむ」に近くて、止められないんだね。

尾上くんは、少しくらい自分に無責任になってもぜんぜんよいと思います。
たった数ヶ月の、私の勝手な観察でしかないけれど。

今年はぜひ、とりあえず春頃までに一回、鍵を開けたまま30分くらい買い物に出かけて帰って来てみて下さい。

何かきっと変わるわよ。
泥棒が入るとか。やりかけのジグソーパズルもバラバラにされてるとか。
おめでとう! 新しい尾上くん!


ラッキー待ち受け
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「ガラスの仮面展」へ一人で行って、月影先生の顔はめパネルの写真をどうしても撮りたくて、係の人にお願いして撮ってもらった一枚です。
友人と行ったのなら、もっとちょけた写真も撮れたのでしょうが、写真をお願いするのにも勇気がいりました。ちょけれませんでした。
でも、ちょけてこそでしたね。私も今年はちょけれるように頑張りますので、尾上くんもがんばって泥棒に入られてください。

■尾上寛之さんの今後の予定
出演情報
フジテレビTWO「ザ・ブラックカンパニー」2月より放送

新国立劇場開場20周年記念公演
「赤道の下のマクベス」
作・演出: 鄭義信
2018年3/6~25 新国立劇場 小劇場
2018年4/11 穂の国とよはし芸術劇場
2018年4/5~6 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
2018年4/15 北九州芸術劇場 中劇場


【筆者プロフィール】
pro_iketani 

池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]
【テレビドラマ】 
2018年1月26日(金)スタート
毎週金曜23:15~
テレビ朝日 金曜ナイトドラマ「ホリデイラブ」



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