池谷のぶえ単行本販売中!

日刊☆えんぶ『池谷のぶえ人生相談の館』は2019年2月20日に引っ越しました。
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第22回 田中麻衣子さん(演出家・Théâtre Muibo)

むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

あけましておめでとうございます。さあ、2019年ですよ。
2019年ということは、2020年だと思ってもそんなに間違ってないはずです。なんなら2021年でもいいでしょう。いっそもう、1988年とかにしましょうか。

「雑」…既に2019年の漢字を発表したっていいわけですが、まあ、人にはそれぞれ違った考えがある…ということを、最近ようやく尊重できるようになってきたので、今年の漢字を発表するのだけは、ぐっと我慢します。

現在、こまつ座「どうぶつ会議」の稽古中です。
個人的には久しぶりに、ほとんどの方と初対面というカンパニー。完全アウェイです。

劇団から客演したての頃はそんなことばかりの日々でしたが、いつのまにか演劇界に知り合いが増えていたのですね。いつも、半分くらいはなんとなく知り合い…という環境になってました。気づけば。

なので今回は、ご一緒するみなさんがどんな方々なのか、どんなお芝居をする方々なのか、どんな趣向の方々なのか…0からのスタートです。

ありがたいことに、みんなで意見を交わし発表するWSなども数日あったので、なるほどなるほど…と思うところはありましたが、ちゃんと作品をつくるには「なるほど」の先に行かなければならない。

そんなわけで、いつになく、ガヤガヤと口を出してしまっています。
口を出しては反省し、反省しては口を出す…パワーを使っているはずなのに、なぜか肥えていく肉体。
パワーなんて使っていないのかもしれない…口を使っているだけなのかもしれない…。

今回は、そんなガヤガヤ中年女を広い心で受け止めてくれている、こまつ座「どうぶつ会議」の演出である、田中麻衣子さんからのご相談です。

*****

のぶえさん、お忙しいところすみません。
初夢についてどうしてもご相談させてください。
先日2019年を迎えましたが、今年も一富士二鷹三茄子を一つも見ることができませんでした。それどころか、考えてみると今まで生きてきて夢に富士山も鷹も茄子もでてきたことがないことに気づきました。来年こそは一富士二鷹三茄子を夢で見たいのですが、どうすれば見れますでしょうか?
また、なんと初夢とは大晦日から元日にかけての夢ではなく、元日から2日の夜に見るものだという意見まで飛び出て、もはや初夢とはなんなんだと混乱する始末です。
ちなみに二日続けて稽古している夢でしたので、初夢がいつ見る夢であっても変わりはないのですが、、
縁起を担ぐ方ではないのですが、縁起がいいねと言われたいので、どうぞよろしくお願いいたします。

田中麻衣子さん(演出家・Théâtre Muibo)

*****

初夢を見る時期については諸説あるようですが、最近ではもっぱら元旦の夜から2日の朝にかけて見る夢を指すようですね。

富士山も鷹も茄子も、夢にたくさん登場するアイテムの中でそんなトップの方でもないでしょうし、さらに、初夢というたった1夜にこのうちのどれかが夢に登場するなんて、きっととても貴重な確率なのでしょう。

だからこそ、吉夢という扱いなのだと思うのですが、夢を画像化する研究では、実際に記憶に残っている夢は最後の20秒のみで、例えば25秒前の夢は覚えていないことが明らかになっているそうです。

ということは、1夜の中のさらにラスト20秒に富士さんや鷹や茄子を登場させなければ、それらの夢を見たという記憶は残らないということです。
8時間睡眠として、7時間59分40秒のあいだ麻婆茄子づくめの夢を見ていたとしても、ラスト20秒が麻婆豆腐だとしたら、麻婆豆腐の夢として記憶されるということになります。

夢ってなんて繊細なものなんでしょう…こんなにも雲をつかむようなものだとは思っていませんでした。

じゃあなぜ、20秒よりも長編の夢があったりするのか。
夢は自分の記憶から構成されているので、長い夢を見た気分の時は最後の20秒の夢をもとに記憶から後付けで長い話をつくっているのだと考えられているそうです。

人ってなんて適当なものなんでしょう…こんなにも勝手に夢を創作しているものだとは思っていませんでした。

さらに、夢の内容を構成するのは、自分の記憶だそうです。
ということは、とにかく自分の記憶にとことん茄子を刷り込んでおけば茄子の夢を見る確率が高くなるということです。

とはいえ、日がな一日茄子のことを考えて生きていけるはずがありません。
麻衣子さんだって、私だって、「どうぶつ会議」のお稽古があります。
「やさい会議」ならまだしも、どうぶつのことを考える必要がある日々であります。

そうなった時に、茄子を手っ取り早く強く記憶に刷り込むにはどうするか。
記憶を構成する材料は自分の「行動」なので、「行動」が夢の内容に反映されることがあります。
ですから、枕の下に茄子の写真を置くといった「行動」によって、それに関連した夢を見ることがあるかもしれないそうです。

女子たちのおまじないなどで、好きな人の夢を見たい時に好きな人の写真や名前を書いた紙などを枕の下に置いて寝る…なんてことを聞いたりしますが、あながち間違っていないのですね。

ということで、本当に茄子の夢が見られるか実験してみました。
富士山の写真や鷹の写真や実物はすぐには手に入らないので、とりあえずスーパーですぐに手に入る茄子で実験です。

1日目
心の中で茄子のことを強く想ってから就寝。
テーマパークのような所に地方公演の空き時間に出かけた帰り、みんなでご飯を食べて帰ろうということになり、和食は嫌だとかなんとか注文ばかり多いくせに店は探そうとしないめんどくさい人たちのために、私ともう一人が店を探していると「ピザ&パスタ」と書かれた店があり、そこに入店。
奥の席を合体すれば大人数座れるということで、男性たちがテーブルを移動している時に大転倒…というところで夢から覚めました。
「ピザ&パスタ」ですよ…もう少しで茄子のアラビアータとかに出会えた可能性が十分にありました。惜しかった…。

2日目
茄子を枕元に置いて就寝。
とにかくずっと、苦手な派手派手しいパーティーの夢でした。
茄子が出て来る気配はなかったです。

3日目
茄子の夢を見ようとすると、なぜか大人数でのストレスを感じる食事系の夢を見る…という法則に気づきました。
むしろ、大人数でのストレスを感じる食事系の写真を枕下に、もしくは、そのことに想いを馳せて寝てみたら、逆に茄子の夢を見られるのではないか…実験です。
トラックを走る夢を見ました…。

そりゃそうですね…そんな法則があったとしたら、何を信じて生きていったらいいのか途方に暮れてしまいます。

夢は偶然見せてもらうもの…といった、おみくじ的なイメージがありますが、やはり、よい夢を見るにはよい1年になるように本気で気合を入れて寝る…という、現実的な努力が必要なのかもしれませんね。

夜見る夢だけではなく、いつか叶ってほしい夢に関しても同じことが言えるのかもしれません。
夢は偶然叶うものではなく、本気で気合を入れて実現させていくことこそ、夢が叶うということなのかもしれません。

思いがけず、無駄にポジティヴな素敵な文章になってしまいました。
本来こんな女ではないので、謝罪します。

麻衣子さんが、お正月2日続けてお稽古の夢を見たということは、とにかくいまこの作品について気合が入っているという証なのだと思います。

まったく知らなかった方々と、日々やいのやいのとひとつの作品を作るというのは、初夢に茄子が出てくるくらいの確率の奇跡的な出来事ですよね。
素敵な作品になるために、お稽古最後の20秒まで大切に過ごせたらと思います。

あ…また自然と素敵な文章に…こんな女ではないのです…。


■ラッキー待ち受け
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良い夢を見るには、七福神の乗っている宝船の絵に
「なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな(長き夜の 遠の眠りの 皆目覚め 波乗り船の 音の良きかな)」
という回文の歌を書いたものを枕の下に入れて眠ると良いらしいです。
47年間生きてきて初めて知りました…なんで義務教育ではこういうことを教えてくれないのでしょうね…。
来年の初夢はぜひ、これを枕の下に入れて就寝を。
※写真はM先輩からお借りしました。

■田中麻衣子さん今後の予定
こまつ座「どうぶつ会議」

作:井上ひさし

演出:田中麻衣子
音楽:国広和毅

1月24日(木)~2月3日(日)
会場:新国立劇場小劇場 THE PIT

【筆者プロフィール】
pro_iketani 
池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]
【舞台】
こまつ座第125回公演「どうぶつ会議」
(作:井上ひさし、演出:田中麻衣子、音楽:国広和毅)
2019年1月24日(木)~2月3日(日) 新国立劇場 小劇場 THE PIT


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第21回 劇団時代の女子たち

むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

今年も終わりますね。
もう耳にタコができていると思いますが、いや、耳にタコが生えてきたら大変なことですが、イカだって大変です。

大体、耳にできるのは海のタコじゃありませんから、イカの心配をすることもないのですが、それよりまず、耳にタコができるくらい何を言いいたいかということです。

一年って早いね。
この言葉を伝えたかった。

ほら、こんなことばかり書いているから一年がとっとと過ぎちゃうんですよ。
この無駄な数行のための時間を貯めていけばさ、もっと有効な時間ができたかもしれないのにさ、そうしてできた有効な時間も無駄に使うんだけどさ。

さあ、そんな瞬く間に過ぎ去っていった今年はどんな一年だったのでしょう。

なんだか落ち着かない一年だったな。
コラム本が出版されて急に思い立ってイベントやったり、憤る出来事があったり、長い風邪をひいたり、舞台挨拶をしたり、久しぶりにナンセンスの洗礼を浴びたり、足がおかしくなったり、突然治ったり、プライベートでも公演でもいろんなところに行ったり、プティ手術したり…。
あちこちガタが来てるくせに、あちこち出かけた一年だった。

そして一年を締めくくる、プティ手術。
自分の皮下脂肪を採取して、培養し、半月板が損傷した左膝に注入する…というものなのですが、今年はまず皮下脂肪を採取するところまで。

よく、痩身のための脂肪吸引とかあるじゃないですか。
あれの小劇場版といいますか、華々しく吸引するのではなく、膝にちょろっと入れるだけのほんの少しの脂肪を採取するのです。
それだけでも、苦痛…。
局部麻酔をするとはいえ、脂肪をゴリゴリと採取している雰囲気は伝わってくるわけですし、術後数日間はどす黒く腫れて宇宙空間のようです。

もっとたくさんの吸引をしたり、整形をしたり…美のためにたくましく挑んでいる方々もたくさんいると思いますが、私は…無理かも。
どうりで美しくなれないはずです。美しくなろうとする根性がないもの。

しかし、インプラントの土台を作った時も思いましたが、自分の身体を自分の身体に移植する…再生医療というのかな? ばっかね、歳とると。

自分の身体を切り取って、違うところに張り付ける、自分コラージュよ。

コラージュというものは、アートの世界だけかと思っていましたが、生きていくには自分の身体を自分で切り貼りしてコラージュしていくことなのですね。言うなれば、生きていくこと=アートなのですね。

いまに、鼻を切り取って足首につけたり、耳を切り取ってさらに耳につけたり、になるんじゃないかしら…大変ね、生きていくのも。

さて、今年最後を締めくくるご相談は、劇団時代の女子たちからのご相談です。

会う度に、ブスな会話(ひどい会話)ばかりしてしまうので、いつの頃からか、自分たちの会合を「ブスオフ」と称するようになり、日々のひどい話を「スイーツ」と呼び、年に2度ほど集っては、それはそれは生産性のないスイーツを楽しんでいる集団です。

暮れの押し迫った忙しい時期になんですが、そんな、ブスオフメンバーたちからの相談をどうぞ。

*****

池谷先輩、お疲れ様です。

劇団猫ニャー時代の後輩です。

私のような一介の主婦がこちらで相談させて頂くのは甚だ恐縮ですが、このような機会もなかなか無く、もう失う物もあまり無いので堂々と相談させて頂きます。



普段、家にいる時は大体ノーブラなのですが、宅配が来た時のごまかし方を教えて下さい。ちなみに私は猫背になり、服とボディに隙間を開けて乳頭の形を隠す方法を取っていますが、スタンダードなこの方法も絶対ではありません。
画期的な方法があったら教えて下さい。



あと、夏場になると躊躇なくサングラスをかける人間が多くいます。それでついつい私も買いましたが、かける勇気がありません。

せっかく買ったのでサングラスを克服する方法を教えて下さい。宜しくお願いします。

立本恭子さん(元・演劇弁当猫ニャー)

*****

宅配には、引き取りの印鑑が必要です。
乳頭を印鑑にしてはいかがでしょうか?
誰一人、同じ乳頭の人はいないと思いますので、十分身分を証明できるはずです。

しかし、さすがに押す瞬間が恥ずかしい…という場合は、印鑑(乳頭)を出す瞬間に物凄い形相をしてください。雄叫びをあげてもいいです。
とにかく印鑑(乳頭)より上部に、宅配員の意識を集中させるのです。

いやでも、そんな物凄い形相や雄叫びなんてできない…女性ですものね、その気持ちもわかります。

よく考えてみてください。
類人猿が二足歩行を始めてから今日に至るまで、約700万年。
その間、女性たちがブラをしている期間なんてせいぜい何百年、日本にいたっては100年もたっていないかもしれません。

ブラなんて、単なる一過性の流行りだと、もっちゃん(立本)から体現していってもらえませんか?

1日目はノーブラで玄関に立つ、2日目はノーブラで玄関を開ける、3日目は玄関から5歩歩いてみる、1週間目はノーブラで近所の人と「こんにちは」と挨拶をする、10日目はノーブラで5歩下がる、半月目はノーブラで駅まで行く、1ヶ月目はノーブラで読者モデルにスカウトされる、半年目はノーブラ専門誌「月間ノーブラ」の表紙に、1年後、女性たちの間でノーブラが流行るはずです。

どうしても恥ずかしかったら、その時こそサングラスをかけてください。


*****

元劇団員というだけで一般人がお悩み相談に参加させて頂き、恐縮です。
会社の仕事の忙しさに波があります。暇なときは、眠気との勝負です。
しかし、何度か寝てしまいました。寝てるけど仕事してそうな雰囲気に見せることは出来ないでしょうか?

Aさん(元・演劇弁当猫ニャー)

*****

会社の仕事の忙しさに波があるとのことなので、忙しい時に一切仕事をしないようにしてください。どんなに忙しくても耐えるのです。
おのずと、暇な時に仕事をせざるを得なくなりますので、暇な時がなくなります。
もう寝てなんていられない状況になるでしょう。

しかしそうなると、忙しさに耐えている時が暇な時になるのではないか? という疑問が湧いて来るでしょう。
そうです。どっちにしろ暇な時はなくならないのです。

そこで提案です。
暇になったら、ノーブラになってみてはいかがでしょうか?
乳頭は印鑑です。寝ている間に、契約書類や保証人書類などに勝手に捺印されてしまう可能性があります。
そんな都会のコンクリートジャングルのような状況になれば、もう、寝てしまうこともなくなるでしょう。


*****

憧れのお悩み相談によんでいただけるなんて、ブスに乾杯です!

改めて全部読みなおしていたら、結構わたし自身のお悩みも解決されて、、のぶえ先輩の日めくりカレンダーが欲しくなりました。


早速、ご相談です!



冬がはじまってしまいました。冬が、寒さが苦手で願わくば冬眠したい。と、思っております。

人間も冬眠した方がいいというような流れはないのでしょうか。

それというのも、冬になると、ドジの頻度が、他の季節に比べて3割増しになる傾向にあります。昨年は一週間のうちに三回財布を落とし(毎回戻ってくる)1ヶ月の間に二度スマートフォンの画面を割りました。

ただ、ドジが増えれば人の優しさに触れる機会も増えるので、感謝の絶えない日々、、とも言えるのですが、頭の中で自分で自分の胸ぐらを掴む率も増えて疲れますし、少し死にたくなります。

平成最後の冬、とにかく、穏やかに、人に迷惑もかけずに、無事に過ごすには、どのような心がけをすればよいでしょうか。

ドジと対岸の位置にいる憧れの池谷先輩へ今更ですが改めてお聞きしたいです。



あと、もうひとつ。うたた寝をしていると、ベルのような音が頭の中で鳴って、起きると、間に合うギリギリの時間で起きれる、というか、起こしてもらえる。。みたいな事がたまにあります。なんとなく、空間にありがとう。。と言って出掛けます。

こういうことってありますか?

以上になります!



よろしくお願いいたします。

和田瑠子さん(女優/元・演劇弁当猫ニャー)

*****

まず、私が知る限りの和田ちゃんを思い浮かべると、ドジの比率が高いのは冬に限ったことではないと思われます。
通年通して、コンスタントにやらかしている様子を、いつも憧れのまなざしで見ております。

現実的に冬眠は不可能ですので、起きながらにしていかにドジを減らしていくかということになるかと思うのですが、多少減ったところでドジはドジ。ほとんどなくならない限り、ドジを悲観する比率は大して減らないでしょう。

実際、和田ちゃんが物を壊したり、失くしたりする瞬間には立ち会ったことがないですが、「ああ…きっとチャージしてないんだろうな…」とか、「ああ…きっと時間にこないだろうな…」とか、その辺はなんとなく予感が的中することがあります。そして的中するとなんとなく嬉しいので、ほっときます。

時々しか会わない私ですら、なんとなくわかってくるくらいですから、ずっと観察していたら、和田ちゃんのドジのサイクルや方程式がわかるかもしれませんね。

ぜひ、Aさんが仕事中暇になった時や、もっちゃんがノーブラで外出する努力をしている際に、和田ちゃんを尾行し続け、ドジを解明したいところですが、それも現実的ではありません。

人間関係というのは、優しいことをしてあげたら優しいことをしてもらえる、悪いことをした人には悪いことが起こる、ということをつい期待してしまいますし、それをすぐ実感したいものですが、なかなかそういうものでもありません。

ですが、自分が見えている範囲ではそうなっていないだけで、どこかで必ず回収されているのではないかと思っています。

優しいことをしてあげたら、「優しい」という粒子は旅に出て、いつか全く違う形で返ってくるのですが、時間も形も場所も人も思っていたイメージと違うから、いつか自分が蒔いた優しさの粒子のお返しとは気づかないのかもしれない。

だから、悪いことをした人も、巡り巡って絶対その粒子は返っていくのだと思います…そう思いながら、忘年会シーズンの辛い電車ラッシュを耐えしのいでいます。

そんな中、和田ちゃんのドジの場合は、レスポンスが目に見えて、しかもすぐわかるじゃないですか。
ドジによって、粒子になる前に人の素晴らしさや感謝にすぐ触れられる。
それは人生の豊かな財産だと思います。
私なんか、めったにドジしないので、人の素晴らしさや感謝に触れられる機会がめったにありません。ちょっと分けてほしいくらいです。

何を言いたいかというと、和田ちゃんのドジはもう相当なレベルなので、小手先で治るものでもありません。
こうなったら、まずドジありきで、そこから生まれるものを慈しんでいって下さい。

そしてベルの件ですが、和田ちゃんが思ってるほど、ギリギリ間に合っていないことも多々あります。
空間にありがとう…という気持ちはとても素敵です。ただこれからは、もうそのベルが鳴ったらアウトだと思って生きて行ってください。


■ラッキー待ち受け
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若い頃の一時期、ファッション=ベスト(チョッキ)だと思っていた時期がありました。これらのベストたちは、劇団公演の衣装としてもだいぶ活躍し、活躍し過ぎて私の手を離れ、劇団の持ち物になっていったベストたちもあります。
私は素敵なファッションとして捉えていたベストですが、ブスオフたちはベストを忌み嫌います。「どの面下げてベストを着ていた!?」とやり玉に挙げられることもしばしばです。
劇団時代、先輩として大した教育もできないうちに解散させてしまった負い目もありますので、ブスオフたちには気が済むまで私のベストをいじくり倒させてやりたい気持ちです。
ほら、ブスたちの大好物な、ベストだよ。


【筆者プロフィール】
pro_iketani 
池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]
【舞台】
こまつ座第125回公演「どうぶつ会議」
(作:井上ひさし、演出:田中麻衣子、音楽:国広和毅)
2019年1月24日(木)~2月3日(日) 新国立劇場 小劇場 THE PIT


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第20回 池谷のぶえさん

むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

はやいもので、私ごときが人さまの人生相談に乗りはじめてから20回目となりました。
恐縮とともに、めでたいですね。

めでたい時には、お祝いでマンションの一部屋などもいただけるのが世の中のシステムだと思ってきましたが、どうやら人生というものはそうでもなさそうだ…ということがやっとわかってきた昨今です。

めでたい時でさえマンションがもらえないなら、今後の人生いつもらえるというのでしょう…途方に暮れることばかりですね。

そんな想いで、「誰か私の人生相談に乗ってくれる人はいないのか」と真夜中にツイートすると、「相談相手を間違えて相談してもらえるのを待ってます」と、ブルー&スカイからの返信。

「じゃあ、来月の人生相談コラム書いてくれる?」と返すと、「でも飲み屋で相談していただき僕は黙ってうなづき続ける感じのがいいです」との返信。

酒を飲みたいだけじゃねーか!!

そんな都合のいい相談なんかぜってーするものか。

ということで、ブルー&スカイくんにコラムというリスクを負わせました。
「池谷のぶえの人生相談の館」20回記念、池谷のぶえさんからのご相談です。(回答:ブルー&スカイ)

※ブルー
いつも誰かの人生相談をしている池谷さん、連載20回目おめでとうございます。おめでたいからなのか理由は分かりませんが、今回は僕が池谷さんの人生相談に答えるということになったようで……自分には荷が重いですし……なにも池谷さんも僕に本気で人生相談をしようとは思っちゃいないはずですが……でも、だからこそ、予想に反して池谷さんの抱える悩みを僕がこの場で見事に解決して「全然期待してなかったのに、お前のおかげで人生がバラ色になったよ!」と感謝されたい、そんな野望が意外にも今の僕にはあります。今回は本気で悩みを解決するつもりなので面白みには欠けると思いますが、これで池谷さんは完全に悩みから解放されるわけですから、そのへんは別にいいですよね。 ということで、解決を求めてきた池谷さんからの相談内容です。

*****

将来、野垂れ死ぬ未来しか見えないので、あまり長生きはしたくありません。そこで、私の寿命のあまる分を、長生きしたい方々に分配できないだろうかといつも考えます。その方がお互い幸せだからです。どうやったら寿命を分けられますか?

お芝居をすると、褒めてもらえることも多いのですが、どうにも自分がやっている気がしません。なので、自分が褒められている気があまりしないのです。いったい誰がお芝居をしているのでしょうか?

気がつくとブスです。ブスだと思わなくて済む方法はありますか? 

池谷のぶえさん(女優)

*****

まず真っ先に僕が思ったのは、この件は今度お酒を飲んだときにでも話しませんか? ということです。自宅もそこそこ近所ですし、19時くらいから飲み始めれば、終電まで5時間以上飲める計算です。もし池谷さんが翌日仕事などなければ、23時くらいから 飲み始めて始発で帰るのもいいですね。僕が池谷さんに相談事があって、何度か僕から池谷さんに「飲みませんか?」とメールして飲みに付き合ってもらったことがありますが、特に相談事がないときに「飲みませんか?」とお誘いするのは「こっちは今お前と飲んでる場合じゃねーんだよ」と思われそうで躊躇してしまいます。相談事があるときはすがる思いなのでついメールしてしまうのですが。お酒を飲むこと以外に何の用件もなくても僕の方は17時から朝までという流れでも大丈夫です。それだとさすがに長時間過ぎるというのであれば、途中からカラオケに行くのもいいと思いますし……と、このまま池谷さんの人生相談を忘れてしまうのも1つの手なのでしょう。でも前半に書いた野望とやらをもうすっかりなくしている僕ですが、一応最後に少しだけ池谷さんの相談に答えます。

長生きしたい人に寿命を分けるには(長生きしてほしいですが)、全国の麻薬の類を買い占めて自分で使ってしまえばいいかと思います。世に出回る違法の薬物が少なくなれば、それで命を落とす人が減って自分の寿命も大幅に短くなるので、結果的に多くの人に寿命を分けたことになるのではないでしょうか。

誰がお芝居をしているのか? ということについては(池谷さんですとしか言いようがないですが)、今後は舞台であれば暗転中にしか登場しない役、そしてセリフは一切喋らない役しかやらないという条件でしか引き受けないようにすればいいかと思います。暗転の中どれだけ無言で凄い演技をしても、それは誰もお芝居をしていないのと殆ど変わらなくなるのではないでしょうか。 

ブスだと思わなくて済む方法は(ブスではありませんが)、お風呂を月イチにすればいいかと思います。臭いんじゃないかということにばかり気にとられて美人だとかブスだとかについて気を煩わすことがなくなるのではないでしょうか。でも実際に臭くなってしまうのは嫌だということであれば、週に1回くらい僕と飲んでもらえれば、そのときに僕が責任を持って確認しますので、臭ければその日は風呂に入ることにすればいいと思います。できれば韓国料理屋ではないけれどマッコリを置いてある居酒屋を希望します。食べ物はまずくてもまったく気にならないタイプです。
※ブルー

結局、酒を飲みたいだけじゃねーか!!
店まで指定しやがって!!


■ラッキー待ち受け
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酒を飲みながらうなづいていたいだけだったのに、コラムを書いていただきありがとうございました。相変わらず、面白い文章を書くね。本人は大したことだと思っちゃいないのだろうけど。
「全然期待してなかったのに、お前のおかげで人生がバラ色になったよ!」
と言いたいところでしたが、「写真(ラッキー待ち受け)って必要ですか?」
と、送られてきた写真で、そんな気持ちはみじんもなくなりました。


【筆者プロフィール】
pro_iketani 
池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]
【舞台】
「ゲゲゲの先生へ」(原案:水木しげる、脚本・演出:前川知大)
11月17日(土)~18日(日) 北九州芸術劇場大ホール
11月22日(木)~23日(金・祝) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場   

【テレビドラマ】 
日本テレビ 日曜ドラマ「今日から俺は!!」出演決定!


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